中国のヘッジファンドが多数淘汰へ

中国のヘッジファンド業界が大混乱に陥っているという話だ。厳格な新規制の達成に追われているためで、場合によっては8月までに半数以上のファンドが閉鎖に追い込まれかねないとまで言われている。

業界団体の中国証券投資基金業協会(AMAC)は16年2月、中国で活動する内外のヘッジファンドに対して、法的な助言を必ず受けることや一定の資格を備えた人員の採用、免許維持に必要な金融商品販売の義務付けなどを盛り込んだ新しい規制を発表した。
政府が進める金融セクターへの幅広い取り締まりの一環として、急速に膨れ上がって不正が起きやすくなっているヘッジファンド業界を整備することが狙いで、AMACは実体のない1万7000本前後のファンドを閉鎖すると警告している。

ただ多くの業界関係者は、やり方が手荒で性急な面があり、経済に不可欠な内外の機関投資家の動きを封じ込めてしまう恐れがあるとの見方を示している。
香港の法律事務所シドレー・オースティンのパートナー、エフィー・バシロプロス氏は「規制当局がこれほど広大な業界を取り締まるのは非常に難しいので、ファンドを淘汰しようとしている。それをやること自体は妥当だが、やり過ぎてしまうリスクがある」と話す。

中国のヘッジファンド業界に対する目が厳しくなったのは、現在の登録免許制では監視が行き届かず、詐欺などの不正が横行するのではないかとの懸念が出ているためだ。
AMACのデータによると、昨年の民間ファンドの登録件数は2倍以上も増えて2万5000件を超えた。このうちおよそ3分の2が、まったく商品を販売していない「架空」ファンドで、恐らくは違法な資金調達や融資などに利用されているかもしれないという。
業界筋は、AMACの免許がしばしば個人間の金融取引を仲介する「P2P」プラットフォームが絡む詐欺行為に使われていると明らかにした。

こうした中でAMACは、先月の春節(旧正月)休暇直前に、リスク管理と適格条件に関する基準を引き上げると表明。情報開示の遅れには罰金を科し、新たなファンドマネジャーは法的な助言を得ることも必要とされ、これらの規制が即時に適用された。
さらに5月、8月と2段階に設けた順守期限までに金融商品をローンチできなかったファンドは免許を取り消される。

法律委事務所クリフォード・チャンスの中国駐在パートナー、YingWhite氏は「新規制の方向性は正しい。しかし問題は春節の直前に即時実効の形で公表され、順守期限が短いことだ。その上、新規則にはなおあいまいな部分が多い」と指摘する。
AMACに登録しているものの現在はまったく商品を持っていないいくつかのファンドは、取材元のロイターに対して、免許を失わないために新商品の開発に取り組んでいると話している。

新規則がファンドの幹部に運用に適した資格と経験を要求していることも、業界が見舞われている問題の難しさを示している。なぜなら十分な人材が存在しないからだ、とヘッジファンドの設立を支援しているあるバンカーは説明する。
上海の小規模なヘッジファンドのある社員も、資格要件の問題は頭痛の種だとこぼす。「今のところ資格を満たすための試験を受けたのは当社で1人しかいないが、同僚が試験の準備を急いで進めている」という。
AMACはコメント要請に応じていない。ただある関係者は、AMACのスタッフはあまりにも多くのファンドを承認したので、適切な監督態勢が取られていないとの思いを持っていると述べた。
その上でこの関係者は、AMACは既にファンドの承認ペースを落としており、追加の規制を検討していると付け加えた。