一帯一路の「債務ドミノ」で次に倒れる国はどこか

中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」で、次に「債務ドミノ」が倒れるのは太平洋諸島の可能性がある。
中国からの債務返済に四苦八苦するトンガのポヒバ首相は、中国が国家資産を差し押さえる可能性について警戒している。それは極端な話のようだが、この地域が抱える中国向け債務13億ドルを巡る再交渉が始まっている。
ポヒバ首相は8月、太平洋島しょ国が共同で中国に債務の帳消しを巡り協議している、とロイターに語っている。対中債務額が1億1500万ドルに上るトンガのような国々は、スリランカのように資産を明け渡すことを余儀なくされるかもしれないと、同首相は示唆した。

スリランカは昨年12月、中国との債務救済取引の一環として、自国の戦略港湾の長期運営権を中国に譲渡している。中国企業が資金提供し建設されたバヌアツのルーガンビル港埠頭を巡って、オーストラリアのメディアも同様の懸念について報じている。
ポヒバ首相はその後、発言を撤回した。だが同首相の発言からは、中国の習近平国家主席が世界的に推進するインフラ構築の真の狙いについて懸念が高まっていることを浮き彫りにしている。

オーストラリアとニュージーランド、そして米国は、中国の影響力に対抗すべく、太平洋諸島地域への支援を強化する計画だと、ロイターは報じた。だが、それにはさほど労力は必要としないだろう。豪シンクタンク、ローウィー研究所の試算によると、同地域が11-16年に受けた対外支援のうち、中国が占める割合はわずか8%。一方、オーストラリアとニュージーランドは半分以上を占めている。
また、中国の対トンガ融資は主に、都市部の復興のようなプロジェクトに充てられている。中国が資産をどのように差し押さえるのか、あるいはなぜそのようなことをするのかは定かではないと、同研究所の太平洋諸島プログラムのディレクター、ジョナサン・プライク氏は言う。
トンガ財政は実際に圧迫されている。ロイターの集計によると、同国の対中債務は国内総生産(GDP)の3分の1に上る。元金返済は予算の4%を占める。3日開幕した太平洋諸島フォーラムで債務帳消しの要請が正式に行われるとは限らないが、11月に開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で習主席にこの話題を切り出す可能性はある。

諸外国は中国が支援するプロジェクトに警戒感を募らせ、「債務トラップ」に対する警鐘も聞こえてくる。マレーシアでも中国の一帯一路計画は激しい反発に直面している。
太平洋諸国は、中国に安くイメージ回復ができる機会を提供している。世界第2位の経済大国である中国にとって、13億ドルは「丸め誤差」にすぎない。それでもトンガは感謝するだろう。