2013年はつかの間の晴天予報か(後編)

(前編より続く)

例えば、丸山氏は「円相場は各国の政策や実体景気の相対比較で決まるもの。日本だけの要因で1ドル90円を下回るような円安になるとは考えにくい」と指摘する。今の円高是正の動きが円安基調へと変わるのは、米景気の力強い回復が前提になるという。
メリルリンチ日本証券の神山直樹チーフストラテジストは「日本株と相関が強いのはドル円相場よりも米国の長期金利。円安による価格効果が日本企業の業績に与える影響は限定的で、日本株の上昇には米長期金利の上昇(米景気の回復)が必要」と主張する。為替による価格効果に米景気回復による数量効果が加わって、初めて日本企業の業績は目に見えるような改善が実現できるというのだ。

田辺経済研究所の田辺孝則代表が今の市場で気にしているのは、ソニーTDK、京セラ、日東電工といった主力電機株の戻りの鈍さ。日経平均が12,000円を目指すには、こうした銘柄が自動車株などと同じように上昇しなければならない。「米国や中国の景気回復に確信が持てるようになれば、今は上値の重い主力電機株も動き出し、12,000円が視野に入る」と田辺氏は予想する。
住宅市場の底入れや米製造業の生産指数などから、米景気は「財政の崖」を乗り越え、年内には回復が実感できるようになるとの見方が今のところ市場では強い。時期については「7月以降」(神山氏)「年の終盤」(丸山氏)とまちまちだが、その前には日本株相場も米景気の回復を織り込む形で上昇軌道に乗る可能性がある。日経平均の12,000円は現実味のある水準だし、少なくとも、米景気の回復期待が市場で継続する限り、株価が大きく下押しするような場面は想定しなくて済むだろう。

さて、気になるのはその後のことだ。デフレ脱却期待と円高是正、米景気の回復で13年は晴天相場が続くとしても、想像力不足のせいか、どうもその後の相場がイメージできない。日経平均の月足チャートを見ると、96年6月(22,666円)、00年4月(20,833円)、07年7月(18,261円)の高値を結んだ右肩下がりの重たい上値抵抗線が横たわる。まるで、日本経済の成長力の鈍化を映しているように見えないだろうか。その延長線にある15,000円程度を突破するには、何か非連続的な力が必要な気がしてならない。

もちろん、企業が1株利益を着実に積み上げていけば、株価は自然に上昇していくという見方もあるだろう。だが、高いエネルギー価格や法人税自由貿易協定での出遅れ、急速な少子高齢化、空洞化問題などを抱えた日本企業と日本経済が、持続可能な成長軌道を取り戻すのは容易ではないはずだ。
市場環境も変化するだろう。デフレ脱却を目指して仮に2%の物価上昇の目標を達成すれば、長期の実質金利を今と同じ1%程度としても、10年物国債利回りは3%を超える計算。さらに「1ドル100円を割れば長期金利は急騰しかねない」(田辺氏)という声もある。いずれ財政危機や金融不安を意識する局面は来ないだろうか。

当たってほしくはないが、13年がつかの間の晴天相場になる懸念も捨てきれない。今年、仮に株式市場が明るさを取り戻したとしても、国も企業も気を緩めることはできない。景気が上向きのときにしかできないことは多いのだから、この晴れ間こそ、日本経済と日本企業が成長力を回復するための改革の機会ととらえるべきだ。