ロッテ『ZEUS』大ヒットの秘密

今年3月に発売されたロッテ『ZEUS(ゼウス)』は、初回700万個出荷と大ヒット。通常、初回出荷で200万-300万個といわれるガムの市場で近年にない好調ぶりだ。

3年ほど前、ロッテは“新しいガム"の開発に着手した。理由は「若者のガム離れ」。ガム市場は、2004年の1317億円(日本チューインガム協会発表)をピークに前年比割れを続けている。「ガムのリーディングカンパニーとしての危機感は大きい」(商品開発部ガム企画室主査・宮下慎氏)。
そこで、研究所は、ガムでソフトキャンディーを挟む3層構造の技術を開発する。それにより、今までとは全く違う食感、味わいを創り上げることができた。
その成果を受け、宮下氏、商品開発部ガム企画室の大峠美貴氏、古市丈二氏の3人が集められた。通常、開発担当は1人で全責任を負う。今回のように3人のプロジェクトチームは、異例のことだ。それだけ、同社の危機感が大きいといえる。

徹底的な調査を行い、「20代の若者においては、ガム離れ以前にガムと無縁の生活をしている」(古市氏)ことがわかった。彼らの消費行動は感覚的である。現在のガムは、「健康」「エチケット」などの機能性に特化したことで、ガムに関心のない消費者には面白くない説明的な商品になっていたのだ。
新しいガムの開発は機能性を排し、感覚的であること。「お菓子なのだからワクワクしたい」(大峠氏)と、3人は、2週間ほぼ寝ても覚めても激論を繰り返し、新しいガムのコンセプトを、まるでゲーム作りのように世界観から作り上げようとした。

4日目に、大峠氏がZEUSというネーミングを思い付き、そこから降臨というワードが浮かんだ。その作業から創り上げたコンセプトを20代にモニター調査し、『ZEUS』の壮大な世界観と刺激に共感する結果を得た。『ZEUS』が発売されると、SNSツイッターが沸騰した。「ガムがここまでWEB上の話題になることはほとんどない」(古市氏)なか、20代が『ZEUS』を試し、それを人に伝えたがった。噛まなければわからない"感性のガム"が彼らの感性にヒットしたのだ。
9月25日、第3弾の新商品『ZEUS<オーロラカーテン>』を発売。今度は「魔法をかけられたように色や形を変えながら天空を舞うオーロラ」をモチーフにした"感性のガム"である。