購買力平価でみるドル円の行方(後編)

(前編より続く)
 
ドル円は過去20年間、ドル安円高方向で推移してきた。経済力、軍事力そして人口といった様々な面で日本の上をいっているにも関わらず。これは、上記のようにアメリカの物価が常に日本の物価を上回ってきたためである。別の言い方をすれば、物価が上昇する国の通貨の価値(米ドル)は、物価が下落する通貨(日本円)に対して、相対的に減価(通貨安)することを意味する。それを示しているのが、購買力平価なのだ。

購買力平価の推移を見れば、今後ドル円がどちらの方向へ向きやすいかがわかる。なぜならドル円は、購買力平価を下回ると購買力平価へ向けやがて上昇しはじめ、上回れば今度は下落していることがわかるからだ。つまり、購買力平価を跨いで、上下に振れているということだ。
現在は80円を下回るドル安円高の状況が続いていることから、購買力平価よりも下の水準でドル円レートが推移している。ということは、今後ドル円購買力平価に向かって上昇していくことが予想される。しかし、購買力平価の水準は100円を割り込んでいる。このことは、ドル円が円安方向に振れることはあっても、05年から07年にかけて見られた超円安相場に向かう可能性は低いことを示唆しているといえよう。
 
ただし、購買力平価を使用するうえでは、いくつかの注意点がある。まず、基準となるレートをどの時点に設定するかで、算出される購買力平価も違ってくるという弱点があるということだ。そして、少なくとも10年以上の長期間でなければ、明確なトレンドが把握できないという弱点もある。
冒頭で述べた「長期的な視点」とはそういう意味である。また、どの物価指数を用いてその国の物価動向(インフレorデフレ)を把握すべきなのか、という問題もある。一般的には消費者物価指数が用いられるが、生産者物価指数の方が適しているとの指摘もある。世の中に出回る商品の価格は、店が生産者から商品を仕入れる時の価格で決定されるからだ。
どの時点を基準にし、どの程度の期間を想定し、そしてどの物価指数を用いるかは使用者それぞれの流儀もあるので、自分にあった購買力平価を使用してみると参考になるであろう。