購買力平価でみるドル円の行方(前編)

今回は、ドル円との関係性が深い購買力平価という要因について、長期的な視点に立って注目してみたい。
 
購買力平価とは、「直物為替レートの期待変化率が2国間の期待インフレ率の差に等しくなる」とうい為替決定理論の仮説のこと。もっと噛み砕いて説明すると、A、B両国の物価を比較した場合、A国の物価がB国の物価よりも割高ならば、A国の通貨は減価(通貨安)しB国の通貨は増価(通貨高)するということである。
 
例えばA国をアメリカ、B国を日本としよう。アメリカは日本と比較し、インフレ傾向にある。インフレとはものの価値、つまり「物価が上昇」し、反対に「貨幣の価値」が下落する経済状況を指す。一方で、日本は長らくデフレの傾向が続いている。デフレとはものの価値、つまり「物価」が下落し、反対に「貨幣の価値」が上昇する経済状況を指す。
 
さて、ここでアメリカと日本に住んでいれば、どこに行っても買えるハンバーガーが、1個につき1ドル200円で買えるとしよう。アメリカでは日本と比べインフレが続いたため、ハンバーガー1個の価値(ものの価値)も上昇し、1年後には2ドル払わなければ買えなくなってしまったとする。一方、日本はデフレが続いたため、ハンバーガー1個を100円で買うことが出来るようになったとする。
1年前、アメリカでは1ドルで買えた商品が、1年後には2ドルを出さないと同じ商品が買えないということは、ものの価値(ハンバーガーの価値)が上昇したのと同時に貨幣(米ドル)の価値が減価したことを意味する。
 
逆に日本ではデフレの影響からハンバーガーの価値(ものの価値)が下落し、反対に貨幣(日本円)の価値が増価したことから、より安い価格で消費者はハンバーガーを買うことが出来るようになった。消費者はより価格の安い方を好むわけだが、このことを簡単に言い換えれば、ハンバーガーを2ドルで買うよりも100円で買うことを好むということである。そしてこの時為替市場では、物価の変動に応じて為替レートが調整されるメカニズムが働き、より安い商品(ハンバーガー)を提供できる国の通貨、つまりハンバーガー1個が100円のままで買える円のレートに上昇圧力が強まるというわけである。
 
(後編へ続く)