ゆうちょ銀行とかんぽ生命が新規業務参入へ

日本郵政グループの金融2社が3日、新規業務への参入を認可申請したことは、同グループにとっては経営強化に向けた大きな前進となる。ただゆうちょ銀行は国内最大の175兆円の貯金残高を持つだけに、民間金融機関から「民業圧迫になる」との反発が強まるのは確実。ゆうちょ銀が住宅ローンの販売攻勢を強めれば、顧客流出を防ごうと低金利競争が激しくなり、地方の中小金融機関が打撃を受ける恐れもある。
 
ゆうちょ銀が住宅ローンに手を広げるのは、資産運用の約7割を国債が占める状況を改め、収益源を多様化するためだ。金利の変動リスクを減らすとともに、利ざやのうまみが大きい個人向け融資に参入しようというわけだ。
しかし、国内最大の貯金残高と全国約2万4千の郵便局網を持つゆうちょ銀は、他の銀行にとって、「大きな脅威」(全国銀行協会の佐藤康博会長)にほかならない。ゆうちょ銀の初年度の住宅ローンの取扱高は数百億円になる見通しだが、これは地方の中小金融機関の貸出規模を上回り、「とても太刀打ちできない」(地方銀行関係者)との声がすでに上がる。
 
10月施行の改正郵政民営化法で、政府が日本郵政株を3分の1超を持ち続けることになったのも不安要素。ゆうちょ銀に特別な信用を与える「暗黙の政府保証」が、顧客獲得に有利に働くとの見方もあり、「金利の優遇キャンペーンなどを打たれれば、既存の客すら流れる」(メガバンク幹部)と警戒する。ゆうちょ銀は、住宅ローンの参入に伴い火災保険の販売も手掛ける方針で、法人向け融資も視野に入れる。
かんぽ生命保険は、市場が急成長したがん保険への参入も検討課題。日本郵政グループの脅威に対抗するため、銀行や保険会社は、経営戦術の練り直しを迫られそうだ。