日本企業のM&Aが過去最高

歴史的な円高を背景に、日本企業の海外投資が活発化し、今年1年間の海外企業に対するM&A(合併・買収)件数が、過去最高に達する見通しであることが31日、分かった。29日にも、空調大手のダイキン工業が米社の大型買収を発表したばかり。円高に伴う海外企業の値ごろ感に加え、日本市場の縮小を見込み、海外進出が加速している。
 
M&A助言のレコフによると、今年1-7月の海外企業へのM&Aは300件、金額で4兆1327億円に達した。このままのペースなら、件数は11年の455件を上回り、過去最高になる見通しだ。
今年に入ってからの大型案件は、三井住友フィナンシャルグループなどが英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの航空機リース事業を約5700億円で買収。電通が年内にも、英広告代理店のイージスを4千億円で買収する。ダイキンによる買収額の約3千億円も、製造業では今年最大規模だ。
大手商社も、円高や資源高による好業績を追い風に、M&Aで海外権益を相次いで取得している。今年は三菱商事がカナダで新型ガスの権益を2300億円で取得し、丸紅は米穀物大手のガビロンを3千億円で買収する。
 
M&Aの動きは、地方にも広がっている。愛知県に本社を置く自動車部品メーカーの大豊工業は、新興国の旺盛な需要を取り込むため、中国最大手の軸受け素材メーカーを6億円弱で買収した。「相手は取引先。(国内が停滞する中で)中国の開拓を円滑に進めるには買収がいいと判断した」と説明する。
一方で、“被買収リスク"も顕在化しつつある。競争力低下に悩む電機業界では、2月に経営破綻したエルピーダメモリのスポンサーに同業の米マイクロン・テクノロジーがつき、シャープは鴻海精密工業(台湾)からの出資で生き残りを目指している。
 
世界では経済危機の渦中にいる欧州企業が投資を大幅に減らし、米国や中国の企業も投資を手控えている。これに対し、日本企業の海外M&Aは、円の高止まりの中で今後も高水準で推移するとみられる。
ただ、ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「経営の一体化がうまくいかず、失敗する例も少なくない」として、やみくもに海外を狙うのではなく、明確な経営ビジョンのもとにM&A戦略を打つ必要性を訴える。