米国の宝くじ熱は金融市場の鏡

米国では、一等賞金が同国史上最高額6億5600万ドルとなった宝くじ「メガ・ミリオンズ」の当せんを夢見て、数百万人が長蛇の列を作った。この現象にはウォールストリートと共通点が非常に多いという。

宝くじ購入者は、当せん金の活用計画に夢中になる。このような反経済的で反社会的とも言える行為が、ギャンブルビジネスを活気づけ、金融市場でも同様の欲求がバブルを作り、過度なリスクテークに傾かせる。
人は、空想を膨らませることが大好きだ。宝くじは、当せん金で購入可能な品々に思いを馳せさせてくれる。こういった行為は、1841年のチャールズ・マッケイ氏の著書「狂気とバブル─なぜ人は集団になると愚行に走るのか」にも、宝くじと市場両方にとっての活力になると描写されている。
社会経済的に低い位置にある人々にとっては、高価な物を手に入れるための方法がほとんどないため、宝くじやギャンブルが特に魅力的に映る。これにより活動が反経済的になり、中毒性もあることから社会の仕組みにも悪影響を及ぼす可能性がある。そして、ギャンブラーは貧困化し、他の社会病理にさらされていく。

その病理は、市場でも何ら変わりない。その一例として、IT株が必ず金を稼げる対象に見えた時代には、プロもアマチュアデイトレーダーも「夢」を実現させるためにできるだけレバレッジを掛けた。その結果、価格は吊り上り、最も信用の置けないスキームでさえ、資金調達を可能にさせた。
宝くじ購入者と同様に「悪徳トレーダー」も成功がもたらす富の妄想を膨らませ、時には法的限度を超えた取引を行う。このような行為はさらにレバレッジを高める。
人間のこうしたもろさは、歴史を通して悪徳業者らがつけ込む格好のターゲットになってきた。理想的な世界では、国が宝くじやギャンブルを規制すると同時に、レバレッジも規制することによって、その影響を最小限に抑える。しかし、現在の公共政策はこれに逆行しており、経済的・社会的破滅を生じさせるリスクを負っている。