東電の救済方法は酷すぎ

枝野幸男経済産業相は14日、東電が公的資本注入を求めた場合、国が過半数以上の議決権を取得する考えを示し、りそな銀行のケースが基本的な考え方だと述べた。
03年に国はりそな銀行の7割超の議決権を取得し、国有化した。この資本注入(実際には預金保険機構による株式取得)は、債務超過に陥る前に行われた予防的公的資本注入だ。
この機動的な資本注入によって、政府は金融機関の不良債権を抜本的に処理するというメッセージを出したと受け止められ、低迷していた株式相場は上昇に転じた。
東電の処理は、このりそな銀行のケースと似ているのだろうか。

まず、「りそな型」というからには、枝野氏は東電に対する現状認識として債務超過ではないと思っているわけだ。たしかに直近の決算では形式的には債務超過でない。ただし、東電幹部がすでに明らかにしているように、賠償その他で東電が立ちゆかなくなっている。財政支援を前提にしないとすでに数兆円程度の債務超過になっているのが実情だ。
その点、不良債権を抱えていたとしても、財政支援なしで債務超過になっていなかったりそな銀行とは財政状態で決定的な差がある。
債務超過であれば、法的整理をして株主や債権者が責任をとるのが資本市場のルールだ。ところが、民主党政権は法的整理ではなく東電救済法(原子力損害賠償支援機構法)で東電を温存させた経緯がある。

この東電救済法の成立方法も姑息で、民主党自民党が水面下で法案修正し、東電への資金注入などで当初の案をさらに悪法にした。いってみれば、資本市場のルールを踏みにじり、本来の株主や債権者が責任を負わずに国民に被せることによって、東電を債務超過にさせない仕組みを先に作ったのだ。
それで、東電は債務超過でないからりそな銀行と同じというのはあまりに虫が良すぎる。
そもそも枝野氏は、りそなに公的資金が注入された当時、「政府の公式見解では債務超過ではないとされながらどうして公的資金を注入するのか納得できる説明がない」と批判していたのだ。

では、なぜ枝野氏は「りそな型」を強調しているのかといえば、資本注入すれば株価も上昇するという「りそな銀行効果」を狙っているのだろう。それは、この東電救済法による株主や債権者の救済を隠すことになって一石二鳥だ。
公的資金注入の理由は、枝野経産相は東電救済法が根拠だと形式的に説明するだろう。しかし、資本市場のルールを無視して株主・債権者が負うべき負担を電気料金値上げという形で国民に負わせることの大義名分はない。株主・債権者の責任追及をやらない民主党とは一体何なのかと問いたい。