休眠預金の認知で問い合わせ殺到

日本の政府というのは、馬鹿なのか、お人よしなのか、まったく理解できないのだが、政府が成長戦略への活用の検討を始めた「休眠預金」をめぐり、預金者から金融機関への問い合わせが殺到し、実際に解約して引き出す預金者が多数現れたことで、政府の思惑は、さらに実現が難しくなりそうだ。

お金の出し入れが10年以上ない口座に眠る休眠預金の検討に政府が着手したのは今月15日。その直後から、金融機関に「古い預金通帳を見つけたが、休眠口座になっていないか」といった問い合わせが増え、対応に追われた。
あるメガバンクでは「コールセンターや支店への問い合わせは、1日数百~1千件近くに上った」(関係者)という。「古い口座の預金は政府に持っていかれてしまうのか」と、あわてた様子で問い合わせてきたケースもあった。
大手地銀では、「長年使っていない口座があったので解約したい」という預金者が1日に数人のペースで訪れるようになった。メガバンクでも、「口座解約が増えている」という。
金融機関側は問い合わせに、「休眠預金扱いになっていても、いつでも引き出せる」と説明している。

銀行の場合、最後の取引から10年が経過し権利が消滅すると、ひとまず利益として計上している。そのままにしておくと利益計上の先送りと見なされ、重加算税が課せられるためだ。
ただ、利益計上後も、通常の口座と分けて、管理を続けている。キャッシュカードなどですぐに引き出すことはできないが、預金者からの申請があれば、通帳や印鑑の照合を行い、数日で払い戻している。

全国銀行協会の永易克典会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は16日の定例会見で、活用に強く反対した上で、「利益を得ようという考えはまったくない。20年たとうが30年たとうが、払い戻しにはつねに応じている」と、語気を強めた。
実際、問い合わせが殺到し、預金者の関心が高いことが浮き彫りになった。ただ、口座数が億単位に上るといわれる休眠預金のほとんどが残高が1千円以下で、引き出す意思がない預金者も多いとみられる。
一方で金融機関からは「認知が広がり、使われていない口座の解約が進めば、管理費の負担が軽減される」(メガバンク)と歓迎する声も出ている。