今年の春闘は二極化の可能性

電機各社の労働組合が16日、経営側に今春闘の要求書を提出した。これで自動車や鉄鋼など主要業種の労組要求が出そろい、12年春闘の労使交渉が本格化する。
電機大手では、歴史的な円高やタイの洪水影響で業績が急速に悪化しており、賃金改善を求める労組はほぼ皆無。一時金や定期昇給に当たる賃金体系維持を巡る攻防が焦点だが、業績が堅調な「重電組」と、テレビ事業の苦戦で巨額の赤字を強いられる「弱電組」と業界内でも明暗が分かれるなか、賃金水準の二極化が進む可能性もある。

日立製作所労組は16日、経営側に要求書を提出し、年間一時金について、昨年獲得実績を0.2カ月分上回る5.5カ月を求めた。三菱電機の労組も同0.3カ月上回る6.04カ月を要求。いずれも発電や産業用機械などが好調で、業績が底堅い重電主力組だ。
対照的に赤字が相次ぐ家電・情報の労組は、厳しい交渉を強いられそうだ。シャープの労組は今春闘で一時金の要求を「業績連動方式」に切り替えた。昨年は5カ月分求めたが、24年3月期の最終損益が2900億円の赤字に転落する厳しい情勢を踏まえて、経営側に譲歩した。
今期1000億円の最終赤字に転落見込みで、国内2,000人の削減を行う方針のNECは16日、会社側が労組側に対して、40歳以上の社員を対象とする早期退職の募集や残業手当カットを逆提案した。

最大の焦点となる定昇についても、経営側は、厳しい姿勢で臨む構え。経団連は1月の経営側指針の中で、定昇について「延期・凍結」の可能性にまで踏み込んだ。電機大手の労使交渉では、定昇維持をめぐる攻防激化が必至の情勢だ。