春闘が始まった

トヨタ自動車日産自動車など自動車大手の労働組合が15日、12年春闘の要求書を会社側に提出した。主要労組は、賃金改定(ベースアップ)要求を見送っており、年間一時金(ボーナス)が最大の焦点になる。来月14日の集中回答日に向け、約1カ月の交渉が本格化する。

主要労組がベア要求を見送ったのは、円高の長期化による先行き不透明な経済環境を踏まえたため。定期昇給の維持は求めている。
一時金については、トヨタ労組が昨年要求の5カ月プラス7万円から同プラス3万円に要求を引き下げた。自動車大手の中では東日本大震災とタイ洪水の影響を最も大きく受けたホンダの労組も、昨年の5.9カ月に対し5カ月と、要求水準を大幅に下げた。

これに対して、12年3月期の連結業績で増益を見込むスズキは前年の5.3カ月から5.4カ月へと引き上げた。三菱自動車も前年の4カ月から4.3カ月へと増額を求めた。日産は5.5カ月、マツダ富士重工業の労組は昨年と同じ5カ月に据え置いた。
15日、富士重工業の本社では、労組の北川秀一委員長が「この1年間の組合員のがんばりを込めた」と、吉永泰之社長に要求書を手渡した。各労組は一時金要求の満額回答を狙うが、会社側は「円高トレンドは継続し、来年度の経営環境も楽観視できない」(日産の高橋雄介執行役員)と、厳しい現状認識を示す。
一方、定昇については労組側が「争点になる可能性は少ない」(主要労組)とみているものの、経団連が「経営労働政策委員会報告」で定期昇給の見直しを指摘したこともあり「(定昇維持が)相当な負担になっている」(トヨタの宮崎直樹常務役員)などと労組側を牽制する動きもある。