ソニー経営陣は「裸の王様」

「これは本当のことなのかね」1月中旬、あるソニー幹部は手元に届いたレポートを読みながら首をかしげた。そこには1月10-13日に米国ラスベガスで開かれた国際家電見本市(CES)でソニーがどのような評価を受けたのかが報告されていた。
その内容はやたらと景気がいい。独自のクリスタルLEDテレビについては、「信じられないほどの美しい画質」「サムスンLG電子有機ELテレビはそれより見劣りした」など、各国のメディアから「賞賛の嵐」だったと書いてある。さらにソニータブレットや小型カメラなど、約10商品が主催者の表彰に輝いたと続く。
そこで、同幹部は米国在住の友人らにCESの様子をこっそり尋ねた。すると「サムスンのブースはバイヤーたちで満員だったが、ソニーは残念ながらスカスカだった」とと伝えられて肩を落としたという。
このような自画自賛レポートや我田引水ぶりが社内レポートにとどまらないというのだから、ソニーという会社は手におえない。

昨年12月、ソニーの経営陣による新しい「中期経営計画」のたたき台が取締役会で検討されたが、「テレビを含めてとにかく都合のいい数字ばかりが並べてあったので、さすがに社外取締役からも、"やり直し"を食らった」(ソニー幹部)という。
極め付きはストリンガー会長だ。もはや批判記事や日本メディアにはほとんど興味を示さないという。気にするのは、「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「ニューヨーク・タイムズ」など、米国の一流メディアだけだ。
「裸の王様」を守っているのは都合の悪い話に向き合わない、官僚化したソニーの体質なのかもしれない。