韓国も貿易赤字に

欧州債務危機の悪影響が本格的に新興国経済に波及してきた。韓国の1月の貿易収支が2年ぶりの赤字に転落したほか、中国も1月の輸出の先行きを示す新規輸出受注指数が悪化。いずれも欧州向け輸出の不振が主因だ。
08年秋のリーマン.ショック以降、世界経済を牽引してきた新興国の成長にブレーキがかかれば、新興国頼みの日本経済も打撃は避けられない。

「欧州景気の回復は見通せず、新興国経済も一時の勢いはない。世界経済の需要が減退し、狭まるパイの奪い合いが激しくなることを覚悟しなければならない」。韓国自動車産業の首脳は輸出の先行きに警戒感を強める。
韓国の知識経済省が1日発表した1月の貿易収支は暫定値で19億5700万ドルの赤字となり、2年ぶりの貿易赤字に転落した。特に輸出は前年同月比6.6%減の415億3700万ドルで2年3カ月ぶりのマイナス。輸出総額の約1割を占める欧州向けが同44.8%減と大きく落ち込んだことが響いた。
韓国は日本と同様、貿易立国として世界経済での存在感を高めてきた。李明博政権は電子.家電や自動車といった基幹産業を中心に輸出増進策を展開。欧米と自由貿易協定(FTA)を締結するなどFTA戦略では日本に先行している。韓国を代表するサムスン電子は薄型テレビの世界シェア首位で、韓国全体の年間貿易額も1兆ドルを超える9番目の国となったばかりだ。
だが、国内総生産(GDP)に占める輸出の割合が4割を超える産業構造は世界経済の動向に大きく左右されるリスクがある。

欧州を最大の貿易相手とする中国も厳しい。
中国国家統計局などが1日に発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)のうち、新規輸出受注指数は46.9と前月よりも1.7ポイント悪化した。謝旭人財政相は「外需の明らかな後退の影響で輸出が困難となり、中国経済は下振れリスクに直面している」と先行きに強い懸念を示した。
国税関総署がまとめた貿易統計では、昨夏から欧州向け輸出の前年同月比の伸び率が1けたに鈍化。12月は7.2%だった。市場では「中国の欧州向け輸出は今後マイナス成長に転落する可能性がある。広東省など輸出産業への打撃と失業者増が続けば、中国の景気失速も懸念される」(アナリスト)と不安視する。

韓国、中国以外の新興国でも、インドは欧州向け輸出が振るわず、11年7-9月期の実質経済成長率が前年同期比6.9%増と、09年4-6月期以来の低水準になった。国際通貨基金(IMF)によると、11年の実質GDP伸び率が前年比4.2%と好調だったロシアも12年は3.3%と減速する見通しだ。
新興国経済の変調は昨年、31年ぶりの貿易赤字に陥った日本経済にさらにダメージを与えかねない。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「アジア向け輸出が落ち込めば、貿易赤字が定着する恐れもある」と警鐘を鳴らす。