東証の上場維持判断基準見直しは微妙

オリンパス株式の上場維持を決めた東京証券取引所の斉藤惇社長が、31日の会見で虚偽記載による上場維持・廃止の判断基準の見直しの可能性に言及した。判断基準が客観的でないとの批判を踏まえた発言とみられるが、見直しの実現可能性は現時点で不透明だ。


複数の関係者によると、東証は虚偽記載の重大性を判断する際、主に、

  1. 金額
  2. 期間
  3. 組織性・恣意性
  4. 訂正後に他の上場廃止基準に抵触するかどうか

といった観点が分析材料となるようだ。
確かにオリンパスの場合、虚偽情報を訂正しても債務超過など他の上場廃止基準に抵触しておらず、かつて上場廃止の判断を下した西武鉄道カネボウと異なり、4.には該当していなかった。

しかし、1.、2.、3.に抵触しないかどうかは、にわかには判断しにくい。連結純資産の訂正金額が最大で1235億円にのぼったほか、損失先送りは90年代からで法定の訂正期間の5年を超える。損失先送りを会社も認めており恣意性は明らかだし、経営中枢が関与していた。
判断基準自体が明らかにされていない上、どの項目を傾斜的に重視するのかも明らかでないため、外部からは東証の判断が理解されにくい面があるようだ。東証の斉藤社長は「間違った判断だとか、意外だったとの声はあまり聞こえていない」との認識を表明しているものの、「いろんな意見を聞き、もう少し客観的でいいものがあれば謙虚に取り入れればいい」とも述べている。

ただ、あまり基準を数値などで明確にすればいいというものでもない。別の弊害も出かねないからだ。「利益を何割まで水増ししても上場廃止にならない」などと誤ったメッセージを市場に伝えることになり、ルールの潜脱に悪用されかねない。基準の明確化を望む意見はこれまでにも繰り返し出てきたが、着地点は見えにくい。