投資信託の解約率にみる投資家動向

11年は市場環境が悪化したこともあり、投資信託協会がまとめた10-12月の追加型株式投信の統計をみると、3カ月連続の純資金流出となった。3カ月連続の純資金流出はリーマンショック後の08年10-12月以来のことである。しかし、こうした投資家心理の悪化は、過去の「解約率」(当月解約額÷前月末純資産額)の推移でみた場合、必ずしもその影響は大きくない。特に過去10年間でみると、解約率は概ね安定的な推移を続けている。むしろ、90年代のほうが解約率は高めに推移している。

90年代は解約率が大きく上下する展開が続いた。当時は現在と異なり、大半の投資信託が国内株式を主要投資対象とする投資信託で占められており、解約率の推移は国内株式市場の動向を大きく受けた。現在は、様々な資産を投資対象とする投資信託が登場しており、個人投資家は世界中の株式、債券などのほか、オルタナティブ資産への投資も可能となった。加えて、証券会社だけでなく、銀行やネット銀行、ネット証券、郵便局などの金融機関が投資信託の販売を開始したことも影響し、様々なタイプの投資家が参入。解約額そのものは投資信託の純資産額拡大に伴って大きくなっているものの、解約率は市場動向の影響を受けにくくなり、概ね5%以下の水準で安定的に推移している。

投資信託の解約率にはいくつか特徴がある。短期売買向きのブルベア型の投資信託などのほか、高リスクの新興国関連の投資信託も解約率が高い傾向にあった。インデックスファンドの解約率も高い傾向にあり、短期売買に使用されるケースもあるようだ。一方で、長期投資に利用されるバランス型の投資信託は解約率が低い傾向が見受けられた。

また、設定時期が新しい投資信託ほど解約率が高い傾向にあることも確認されている。11年における設定年別の投資信託の解約率の推移を見てみると、設定時期が新しい投資信託の解約率が高い。この理由としては運用の仕組みの複雑化やハイリスク・ハイリターン型の投資信託の設定の増加などが影響していると考えられる。
特に09年、10年は仕組みが複雑な通貨選択型ファンドが数多く設定された影響から、通貨選択型ファンドの解約率が高かったほか、アジア関連の投資信託も高い解約率となった。こうした投資信託の解約が多かった背景には、リスクを把握せずに商品を購入した投資家が少なくなかったものと推測される。昨年、金融庁は通貨選択型ファンドの販売規制の強化に踏み切ったこともその証左であろう。