31年ぶりの貿易赤字の見方

財務省が25日発表した平成23年の貿易収支が31年ぶりの赤字に転落したことは、国内でモノを作り、輸出をして稼ぐという戦後の日本を支えてきた経済成長モデルが岐路に立たされていることを改めて浮き彫りにした。国内でのモノ作りを守ると同時に、海外で稼ぎ、その利益を国内に還元することで、モノだけでなく、海外からの所得も合わせた経常収支で黒字を維持できるかが、今後の日本の成長のカギを握る。

「以前のような10兆円以上の大幅な貿易黒字に戻ることはない。いったんは黒字に回復しても2010年代後半に赤字に戻る可能性が否定できない」と伊藤忠経済研究所の丸山義正主任研究員は、貿易赤字が定着するリスクを指摘する。

今回の赤字転落は、東日本大震災に伴う輸出の落ち込みと火力発電用燃料の輸入の急増が主因。震災からようやく復旧したところに、円高に加え、欧州債務危機の影響で海外経済が減速し、輸出の回復シナリオが崩れたことも響いた。
震災の影響は「一時的な特殊要因」といえるが、当面は赤字基調が続く可能性が高い。欧州危機による世界経済の減速が本格化するのはこれからだ。輸出の2割を占め、頼みの綱である中国経済に変調が広がっている。
定期検査を終えた原発の再稼働のめどは立たず、燃料輸入は今後も高水準で推移。イランの核開発問題で中東情勢が緊迫化し原油相場が上昇すれば、輸入代金が膨らみ、国外への資金流出が増大する。