官僚主導の増税主義が日本に齎すもの

経済政策の官僚主導はますます露骨になっており、民主党政権は唯々諾々と官僚に従う。復興増税の次には消費増税というわけで、野田佳彦首相は消費増税に「不退転の決意」を表明し、周囲には「不成立の場合、衆院解散・総選挙も辞さない」と漏らしている。増税がデフレ日本を復活できなくしてしまうというのに。

11年11月、国会では東日本大震災からの復興に向けた11年度第3次補正予算案に続き、復興増税法案が成立した。復興債償還財源に使う所得税の臨時増税は25年と長期にわたる。増税期間の引き延ばしの結果、1世帯当たりの所得税年間負担増は薄められ、財務省の試算では年収500万円の場合で1,600円、800万円だと7,360円という。民主、自民、公明の3党は「月にならすと負担額はコーヒー1、2杯分にすぎない」と納得したわけだが、甘すぎる。増税路線は慢性のデフレ病をさらにこじらせるからだ。

98年以来、物価下落を上回る幅で国民が消費や貯蓄に回せる可処分所得が下落し続けている。可処分所得のもとになる世帯主の収入が細っているためで、家電製品や身の回り品の価格が下がっても、あるいは100円ショップで何でも買えても、暮らしぶりはより貧しくなるのが日本のデフレ病の特徴だ。10年のサラリーマンのひと月当たり可処分所得は97年に比べ66,700円、13.4%減った。前年比で平均1%、4,770円ずつ下落している。

こんなときに、復興増税と消費増税の追い打ちをかけられると、これまでの慢性デフレは一夜にして激症デフレに転じかねないのだが、いったい、どれだけの国民がわかっているのだろうか。