中国の景気減速は鮮明に

中国国家統計局は17日、11年通年の国内総生産(GDP、速報値)が物価上昇分を除く実質で、前年に比べて9.2%増えたと発表した。3年ぶりに10.4%と2けた成長を回復した10年から1.2ポイントの成長率鈍化となり、2年ぶりの1けた成長に止まった。欧州債務危機による輸出増加率の下降がじわりと響いた。

11年の名目GDPは47兆1564億元(約573兆4200億円)だった。10年に名目GDPで日本を追い抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国となった中国の成長鈍化が、世界経済の回復に今後どう影響を与えるか注目されそうだ。
また、同時に発表された11年第4四半期(10-12月期)のGDP成長率は前年同期比で8.9%と、4四半期連続で減速した。資産バブルやインフレ対策の金融引き締め策が続く中で、中国にとって最大の貿易相手先である欧州向け輸出が、昨年夏から下降線をたどったことが追い打ちをかけた。

昨年7月の高速鉄道追突事故を受け、鉄道建設など投資面でブレーキがかかり始めたほか、自動車や家電などの国内消費も伸び悩んでいる。12年のGDP成長率を、政府系シンクタンク中国社会科学院は8.9%と予測しており、中国の高度経済成長には陰りが出始めたとの見方もある。
中国の成長鈍化は、特に日本企業に大きな打撃を与える懸念がある。日本の中国向け輸出は年間13兆円規模に達し、全体の約2割を占める。国内市場が少子高齢化で縮小するなか、日本企業はこぞって中国など新興国を中心とする海外事業の強化を進めてきたが、こうした中国頼みの経営戦略の練り直しを迫られる可能性もある。

「中国は世界経済の牽引車であり続けるが、2桁の高成長は終わりに近づいているのではないか」。新日本製鉄の三村明夫会長は、高度成長時代の終焉を予想する。
鋼材輸出の15%を占める中国向けは昨年11月に前年同月比20.4%減と大きく落ち込み、8カ月連続のマイナスとなった。中国では1月下旬の旧正月後に鋼材需要が回復する傾向にあるが、今年は伸び悩むとの見方が多い。
化学業界も同様だ。石油化学製品の基礎原料であるエチレンの11の国内生産量はリーマン・ショックの直撃を受けた08年をさらに下回ることが確実。昨秋以降、中国での取引が急減したためだ。大手化学メーカーの幹部は「成長鈍化が長期化すれば、業界再編圧力が強まりかねない」と警戒する。

昨年の中国の新車販売が2%台の13年ぶりの低い伸びとなったことは、日本メーカーに大きな衝撃を与えた。日産自動車は「個人を中心に販売は堅調に推移する」と、強気の見方を崩していない。ただ、市場拡大のペースが鈍化するのは避けられず、「シェア争いが激化し、優勝劣敗が鮮明になる」(業界関係者)との声が出ている。