また消耗戦に突入?の牛丼業界

牛丼業界の競争が今年、いっそう激化しそうだ。松屋フーズが新年早々、松屋の「牛めし」並盛りの定価をこれまでより40円安い280円に改定すると発表、ゼンショーホールディングス(HD)が展開するすき家の牛丼と同価格となった。松屋の攻勢を受け、380円で販売する吉野家ホールディングスも値下げに踏み切るのではないかとの観測も出ている。ただ、昨年は度重なる値下げキャンペーンに効果の薄れも見え始め、消耗戦に陥る可能性も懸念される。

牛めしの価格改定を5日に発表した松屋フーズの緑川源治社長は背景について、「現在の経済状況では、価格重視のお客さまが多いと感じている」と述べ、値下げによりこれまで手薄だった女性や年配、ファミリーなどの客層を呼び込みたい狙いを示した。値下げは期間限定での240円セールが終わる16日午後3時から。同時にたれも、これまでよりさっぱりとした味付けに改良する。
松屋フーズは店舗も積極出店しており、12年度に松屋を中心にグループ1,000店舗体制が確実な模様。値下げと店舗拡大で牛丼業界「万年3位」からの脱却を図りたい考えだ。

こうした松屋フーズの動きに、同価格に並ばれたゼンショーHDは「他社の動きによって(すき家の)価格を変更するということはない」、吉野家HDも「価格について慌ててどうこうするということはない」とひとまず静観の構え。
だがゼンショーHDは、前回松屋フーズ牛めしを380円から320円に値下げした09年12月には直後に牛丼を330円から280円に値下げしており、さらなる値下げの可能性も否定できない。
また吉野家HDは現在、メニューを絞って牛丼を290円で販売する「築地吉野家」という店舗を実験的に運営しており、野村證券の繁村京一郎シニアアナリストは「この店舗を展開するなど吉野家は今年、価格への取り組みに動く可能性がある」と指摘する。

11年通期の既存店売上高はすき家が前年比3.5%増、松屋が3.1%増(概算値)で、吉野家が3.2%減(同)。前年と比べて吉野家はマイナス幅を縮小したが、すき家松屋のプラス幅は減った。要因には度重なる値下げキャンペーンの効果が薄くなっており、消費者が期間限定の値下げに反応しなくなっていることも指摘される。新規客層の開拓につながるか未知数の価格競争が再燃すれば、各社の経営に悪影響を与える可能性がありそうだ。