震災後安値で踏み止まった銘柄に注目

11年の個別銘柄のチャートを改めて見返すと、「震災後直後の安値」がフシ目として意識されていたことが分かる。
震災直後、多くの銘柄で株価が急落し、ローソク足が長い下ヒゲをつけた。その後、いったんは戻したものの、再度この水準に接近し、もみ合いになったり、中には割り込んだりもした。

11年の3月安値をその後に割り込んだ銘柄としては、自動車株や海運株が該当する。自動車株は円高や欧米の景気懸念の影響に加え、タイ洪水でも大きな被害を受け、トヨタ自動車を代表に、大手銘柄が軒並み3月安値を割り込んだ。また、海運セクターは、コンテナ船市況の悪化が響いて多くの銘柄で7-8月に株価が急降下し、商船三井をはじめ、いまだに株価は底値圏にある。

一方で、3月安値付近で踏みとどまった銘柄もある。
ダイドードリンコは、震災で慎重な見通しを立てたことや、夏場の電力不足対応で自販機規制が懸念されたことから、株価は3月安値と同値である2,800円まで8月に下落。ここで反発している。ただし、PBRはいまだに0.7倍台。今後は、冬の気温低下による缶コーヒーの販売増がどこまで業績を押し上げるかに期待が掛かる。
自動車部品では、TBKが3月安値300円に対して、10月に301円まで下落した。ただし、同社はトラック用ブレーキが主力。自動車業界でもいすゞ自動車日野自動車などトラック関連株は震災やタイ洪水の影響が限定的で、早期に上昇トレンドに転じている。同社は2月高値の600円を目指す展開が期待される。

ほかにも、TOTOは3度、日本特殊陶業は2度、3月安値で跳ね返しているほか、島津製作所は3月安値と同値となる555円で9月に反発。メディア株では、テレビ朝日アサツーディ・ケイが3月安値付近で底打ちし、反発している。
震災後の3月安値で反発した銘柄は、「頑強な底値を形成した」との見方もできる。また、配当利回りが高い企業も多く、見直し買いが入る展開にも期待できる。

上記は内需関連株が多いが、中国など新興国では今後、内需刺激策で早期に景気がテコ入れされる可能性が高く、企業業績にも貢献してきそう。欧米景気の見通しが厳しい中で、当面は国内と新興国で稼ぐ企業に注目しておくべきだろう。