スマートシティ元年で日本は変わるか

今年より国内数か所で本格的に始動する気になるプロジェクトがある。それは「スマートコミュニティ」だ。
スマートコミュニティというのは、省エネルギーのインフラや次世代送電網(スマートグリッド)などを一括整備する地域のことで、再開発を行う一定の区画に対して、スマートグリッドなどや太陽光発電装置、電気自動車などの省エネ型のインフラを整備する「まち」のことだ。
東日本大震災原発事故による電力供給不安などを背景に、スマートグリッドや電気自動車、省エネ家電などを組み合わせて都市全体のエネルギー供給を効率化する試みに注目がいつになく集まっており、「スマートシティ元年」とも呼ばれるほど各地で建設が計画されている。

かなり大きい規模で実施しようとしているのが、大阪府茨木市。18.5㏊という広大な工場跡地が最先端の街に生まれ変わろうとしている。
ここは、東芝が冷蔵庫工場跡地に建設を計画している大規模なスマートコミュニティで、今年3月まで事業化に向けた調査を進め、早ければ13年度にも着工する。事業費は数百億円に達する見通しだ。
電力会社の発電所だけに頼らない、これが東芝が計画しているスマートコミュニティの最大の特徴だ。数百世帯の建設を想定し、太陽光発電システムや燃料電池、通信機能を備えた次世代電気メーター「スマートメーター」を設置。コージェネレーション(熱電併給)などを利用した商業施設や学校、病院なども誘致する。
太陽光発電は天候で発電量が左右されるため、蓄電池技術などが不可欠。このため、東芝スマートグリッドを使った制御システムで電力を一元管理し、受給に応じた最適配分を行う。

これに先立って、大規模なスマートシティ構想をいち早く打ち出しているのがパナソニックオリックス住友信託銀行三井物産などと共同で、神奈川県藤沢市の工場跡地19㏊に1,000戸の省エネ住宅を建設、こちらは13年度の街開きを目指す。
計画人口は3,000人。すべての建物に太陽光発電やLED照明などを備え、「省エネ技術を街として一つにまとめる」(大坪文雄社長)構想だ。総事業は約600億円にのぼる。

京都では、府を挙げて14年度まで経済産業省のスマートシティ実証地域に認定された「けいはんな学研都市」で実証実験中だ。60億円の事業費のうち40億円は補助金で賄われる。既存住宅も含め900戸に太陽光発電を設置するほか、学研都市内の自治体や企業などはEVを350台導入。二酸化炭素排出量は05年比で家庭は2割、自動車は4割の削減を目指す。

はたしてスマートシティは景気の起爆剤となるのか。三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部の小西康哉・主席研究員は「太陽光や風力発電は、電力会社から購入する電気より割高。住民が高い光熱費に納得できるか」とやや冷めた見解だ。だが、その一方で、りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員は「純粋な国内向けの事業であるスマートシティ建設は、産業構造の転換につながる可能性もある」と期待を寄せている。
個人的には、後者の荒木氏の考えに賛同したいが、どちらかというと、政府、自治体主導でこのような形に持っていかねばならないだろうと考えている。景気を浮揚させるには、仕事を増やすためにはどうしたらよいかということを考えれば、このような裾野の広い産業構造に力を入れていくのは当然のことだと考えている。GDPの伸び悩みを人口減少やアジア勢の台頭のせいにするのではなく、日本人が日本でできること、海外勢に負けないことを考え、国が主導してやっていけばいいだけのことではないだろうか。