EU諸国のドイツ化は両刃の剣

ドイツ的な経済モデルに沿って欧州全体を作り変えようとしているドイツ、いわゆるEUをドイツ化しよう取り組みは、ドイツにとって両刃の剣なのかもしれない。

メルケル独首相と債券投資家を納得させようと、イタリアやスペイン、アイルランドなどユーロ圏諸国はこぞって、競争力強化に向けた政策を推進している。
しかしGDPの半分近くを輸出が支えるドイツにとって、近隣諸国の「ドイツ化」の試みが成功し過ぎるのも問題だ。他のユーロ圏諸国が労働コストの低減化に成功すれば、エンジニアリング欧州最大手のシーメンスから高級車メーカーのBMWまで、圧倒的強さを誇るドイツの輸出企業が南欧諸国からの挑戦にさらされることも起こり得る。東西ドイツの統合後、産業の空洞化、大量失業によって「ドイツ病」が発症したときとまったく同じことが起こりうるということだ。

シュレーダー政権で経済労働相を務めたウォルフガング・クレメント氏はインタビューで、「競争が激化するのはドイツの運命だ。われわれもさらに強化を急ぐ必要がある」と述べ、「私が大いに懸念するのは、ドイツの強さばかりが話題になる中でドイツが自己満足に陥ることだ」と警鐘を鳴らしている。