R&Iが日本の発行体格付けを格下げ

格付投資情報センター(R&I)は21日、日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けをAAAからAA+に引き下げると発表した。格付けの方向性は安定的とし、格付けの見直しに入っていることを示すレーティング・モニターを解除する。
国内格付け会社が日本国債を格下げするのは初めてのことだが、R&Iは社会保障改革で負担増が先送りされるほか、経済活性化への展望もないと指摘。「消費税増税が実現しても相当の間は政府債務残高の増大は避けられない」と財政の一段の悪化が見込まれることを格下げの理由に挙げている。
また、R&Iは「先進国で最悪水準にある債務残高の対国内総生産(GDP)比率が安定化するめどが立たない」とみている。

11月30日の時点で、日本国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表していたためか、サプライズ感はなく、「大きな影響が出るとは思えない」「織り込み済み」といった市場関係者の声が多い。政府系機関についても格下げされることにはなるだろうが、パラレルな動きとなるため、クレジットスプレッドがワイド化することはなさそうだ。また、格付けの方向性を安定的としたことに関しては、野田政権の財政再建など政策の方向を勘案した結果と考えれば、納得できるものだといえる。

その一方で、税と社会保障の一体改革の素案がまとまる前に格下げされたことに意外感を感じている市場関係者もいる。「踏み込み不足という評価」「給付減、負担増につながる話は、先送りされている」「財政再建に向けたスタンスに対して警告を出した」という印象を受けているようだ。
また、格付けの方向性が安定的だったことに関しては、社会保障と税の一体改革はまだシナリオの途中段階であり、頓挫していない点を見たのではないか、といった解釈のようだ。租税などの国民負担率が低く、政策次第で財政再建は十分可能という指摘もある。このほか、国民の痛みを伴う増税議論を公然とできることは評価すべき、という声もある。