先進国の借金合計が今年は10兆ドル

経済協力開発機構(OECD)は、先進国の公的借入金額が今年は10兆ドルを上回り、12年はなお拡大するとの見通しを発表した。ユーロ圏と世界経済の先行きが不透明さを増すなか、市場や政府は来年も引き続き苦しい資金繰りを強いられそうだ。

主要先進国を代表するOECDは、今月発表する最新の借入金額見通しで、市場が持ち前の「アニマル・スピリット(動物的な衝動)」を発揮して予測不能な動きをすると、財政への圧力が続き、債務の借り換えを予定する多くの政府の安定を脅かすだろうと警告した。
OECDの公的債務管理部門トップのハンス・ブロメシュタイン氏は「(時として)市場で起きる事態は、アニマル・スピリットが市場力学を支配する状況を如実に示しているように見える。それによって国債利回りが上昇し、政府債務の持続可能性に重大な影響を及ぼす」と述べた。

近い将来OECDを構成する先進諸国にとって、民間市場での多額の資金調達が「大きな課題」になるという。いわゆるロールオーバー(借り換え)リスクが広がり、多くの国で政府や経済の安定を維持する障害となりかねない。
償還を迎える国債の借り換えに行き詰まると、ユーロ圏諸国であれば欧州中央銀行(ECB)に頼るか、ギリシャアイルランドポルトガルのように緊急金融支援を仰ぐことを余儀なくされる。OECDのデータによると、加盟国全体で必要な借入金額は今年は10兆4000億ドルに上る。来年は10兆5000億ドルに増えると予想され、07年比で1兆ドル増、05年比では2倍に近い。これはイタリアやスペインのような世界有数の経済国でも市場から閉め出される危険性を浮き彫りにする。

借入金額は09年と10年のほうが多かったが、リスクはかつてないほど高まっている。予測不能な市場の混乱が借り入れコストの上昇を招いているためだ。
OECDによると、OECD諸国における短期債発行の割合は44%で、07年の世界金融危機以前よりずっと高い水準が続いている。これを問題視する投資家もいる。政府が頻繁に(時には毎月のように)借り換えを必要としていることを示すからだ。長期債務にもっと債務を転換できれば、財政の安定につながりやすいと考えられている。
さらにOECDは、国債が相次いで「リスク・フリー」の信用格付けを失っていることも深刻な問題だと指摘する。イタリア、スペインの国債が格下げされ、フランス、オーストリアまでもが格下げの可能性に直面する。現時点ではフランス、オーストリアともトリプルAの格付けだが、投資家はもはやリスク・フリーとは見なしていない。