ドイツ国債がなんと札割れ

ドイツの中央銀行ドイツ連邦銀行が23日に実施した新発10年国債の入札で、金融機関の応募が調達予定額を大幅に下回る異例の「札割れ」となった。債務危機で投資家の欧州離れが進みつつあるとの懸念が広がっていることの証左であり、欧州主要国で最も財政が安定したドイツの国債でさえ、十分な需要がなかったことを示すものである。同日の欧州債券市場ではイタリアなどの国債利回りも軒並み上昇。欧州債務危機の影響は拡大の一途をたどっている。
ドイツ連銀の入札では、60億ユーロの募集額に対して、応募はそれを35%下回る38億8900万ユーロにとどまった。平均落札利回りは1.98%。欧州各国と比べて低い利回りが嫌われたほか、危機拡大を懸念する金融機関がドイツを含めた国債の購入を手控えた可能性もある。
最高の格付けを誇るドイツ国債は、現在世界で最も安全な資産であると位置付けられている。だが、ユーロ共同債導入など債務危機対応が一段と進めば、ドイツの財政負担がさらにかさむという懸念も高まっている。
一方、23日のイタリアの10年債の利回りは再び、自力の財政運営が困難な危険水域とされる7%台をつけた。7%台は17日以来で、モンティ政権発足後も市場は同国財政を不安視したままだ。スペイン国債も約6.7%まで上昇、フランスは約3.7%、ベルギーは約5.3%に達した。

2年余り前にギリシャで始まった危機はアイルランドポルトガルを飲み込んだ後、イタリアとスペインにも波及、フランスにまで迫っている。このリスクはドイツにも及ぶ恐れが出てきたわけだ。
欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のフレドリク・エリクソン所長は「ドイツは市場の動向から隔離され得るという考えが一部であったが、それは夢想でしかなかった」として、「ユーロ圏のシステミックな危機はドイツのように支払い能力が十分で経済の競争力が高い国まで蝕もうとしている。同じユーロ圏にいることで、危機はドイツにも広がりつつある」と語っている。
しかし、ドイツのメルケル首相は危機解決策としてのユーロ共同債発行への反対姿勢を崩さず、欧州中央銀行(ECB)は国債購入の拡大を拒否している。