今年もタコの呪いはやってくるのか?

日経平均株価は再び1万7000円の大台にチャレンジしようとしている。もっとも、市場関係者には10月相場に対する楽観の声はさほど聞かれない。3月期企業の4-9月期の決算発表では下方修正のリスクが高まっている。11月8日の米大統領選を前に神経質にもなりやすいからだ。市場では過去の経験則になぞらえ「オクトパス(タコ)の呪い」を警戒する声が出始めた。

「今年も『タコの呪い』の季節がやってきた」とみずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは話す。10月を表す英語「October」の語源は数字の8。タコ(Octopus)の語源も同じだ。歴史的な大暴落がなぜか10月に集中してきたうえ、西洋ではタコは忌み嫌われる存在であったことから、こう呼ばれるようになったという。確かに1929年の「暗黒の木曜日」も1987年のブラックマンデーも10月だ。

今年の10月はどうだろうか。最大の懸念の1つは企業業績だ。この日は川崎重工業の値動きが話題になった。前週末9月30日に、17年3月期の連結純利益が前期比64%減の165億円になりそうだと発表。3日は一時11%安まで売られ、2カ月ぶりの安値を付けた。従来予想の490億円から大幅な下方修正で、配当予想も年10円から年6円としたことが嫌気された。想定為替レートを1ドル=110円から102円に見直したことに伴う修正に加えて、新興国の経済停滞などの影響で船舶海洋事業の不採算案件も響いた。

注視すべきは「為替の影響はともかく、本業がうまくいっていない。川重を皮切りに、決算でこうした事例が頻発する可能性がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)との声の指摘だ。4~6月期の決算発表では「為替の影響はあるが、本業は思ったほど悪くない」との見方が広がっただけに、ショックが大きくなる可能性がある。

国内だけでなく、海外にもリスクは潜んでいる。足元の相場を左右しているドイツ銀行問題や、11月の米大統領選だ。日銀や欧州中央銀行(ECB)などによる金融緩和の限界論もささやかれるなかで「ひとたび危機となっても、中央銀行が救いきれない可能性がある」(みずほ証券の香月氏)との懸念もある。

ただ、上昇を勝ち、下落を負けとした場合、10月の日経平均はこれまで36勝31敗で、勝率は5割を超えている。昨年も中国人民銀行の追加利下げなどを受けて、日経平均は1,694円も上昇した。今年のタコはどれくらい暴れるだろうか。