懸念される2銘柄のストップ安

英FTSE100種総合株価指数2.3%高、ドイツ株式指数(DAX)2.6%高、そして米ダウ工業株30種平均が1.5%高で2カ月ぶり高値――。順当な英国総選挙や米雇用統計を受けて大幅高となった欧米市場に続いて始まった11日の東京株式市場。開始15分後に前営業日比300円44銭高の1万9679円63銭を付けたものの、結局はそこがこの日の高値になった。
特に先週金曜日に好決算を発表した、市場を代表するトヨタ株が小安い動きになったことで市場関係者からは「欧米株高にも関わらずこの水準とは、だいぶ売りが多い印象だ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)との声が漏れた。
むろん日本時間の夜に予定されるユーロ圏財務相会合でのギリシャ金融支援問題の行方を見たいという、外部環境への様子見姿勢もあるだろう。だが、むしろこの日に目立ったのは日本株の「2つのストップ安」を懸念する投資家の声だ。

まず、週末に「1200億円以上ある資本金を1億円に減らし、累積損失を一掃する」と伝わったシャープ。一時31%安とストップ安水準まで売られ、終値も190円と26%安で引けた。減資自体では既存株主の持ち分は変わらないものの、将来の増資の可能性など資本政策の不透明感を嫌った売りが殺到した。
シャープだけであれば、業績不振の固有企業の特殊要因と割り切れた投資家の心を暗くした「もう1つのストップ安」が東芝だ。8日に不適切な会計処理があったとして、従来、営業利益で3300億円と25年ぶりの最高益更新を見込んでいた2015年3月期の業績予想を取り下げ、決算発表を見送ると発表した。期末配当も無配とする。
問題の発端は4月3日の「インフラ工事で不適切な会計処理があった可能性があり、特別調査委員会を立ち上げた」という発表だ。それが約1カ月後の8日になって業績予想の取り下げと同時に、社内外メンバーによる「特別調査委」から一歩進んだ、外部専門家のみの「第三者委員会」の立ち上げが発表されたことで、「初報時点に比べ、不正があった可能性があるビジネスの範囲と時間軸が広がった」(野村証券の山崎雅也シニアアナリスト)と問題の深刻化を懸念する声が相次ぐ。東芝株はこの日ストップ安水準のまま、17%安の403円30銭で取引を終えた。

ある国内投信のファンドマネジャーは「仮にオリンパス事件をほうふつとさせるような不正につながれば、日本を代表する銘柄だからこそ、その不信感は日本株全体に波及しかねない」と危惧する。直接関係がないとはいえ、折しも当のオリンパスは8日の取引終了後に2015年3月期連結最終損益が、従来予想の450億円の黒字から一転、87億円の赤字に転落したと発表したばかり。米国子会社が米司法省の調査を受けていることに関連して539億円の特別損失を計上した。それ以外にLIXILグループも7日に予定していた2015年3月期連結決算の発表を中国子会社の会計問題が原因で延期している。

現時点では個別企業の特殊事情の域を出てはいない。だが、表裏一体に、そこはかとなく日本企業の決算発表への失望感が漂っている中だけに気になる動きではある。市場予想を下回る業績予想の方が多く、少なくとも「買い材料にはなっていない」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員)との意見が大勢だ。今週も1700社超の決算発表が予定されるが、悪材料の方が目立つなか、「上値を追う展開には決算以外に別の支援材料が必要になってきた」(証券ジャパンの大谷正之調査情報部長)との見方が増えつつある。