上場企業の配当額は過去最高へ

上場企業が稼いだ利益から株主向けに配分する配当額が、14年3月期は過去最高になる見通しだ。円安効果や内需の持ち直しで、企業の利益水準は金融危機前の9割強に回復。株主に報いようとする動きが強まっている。家計や年金は配当収入で潤うことになり、個人消費の底上げ期待にもつながる。企業にとっては、将来へ向けた設備投資や賃金の引き上げに動き出すかが今後の課題になる。

電力などを除く3月期決算企業約2,200社の今期の配当額は、前期から9%増えて約6兆3700億円となる見込み。増加は4年連続で、リーマン・ショック前で、これまでの最高だった08年3月期の6兆1600億円を6年ぶりに上回る。全体の4社に1社が増配または復配する見通し。
家計部門は日本株の20%を直接保有し、年金や投資信託分も合わせれば今期は2兆円超の配当が家計の手に渡る計算だ。東京証券取引所第1部に上場する株式の時価も4月以降で76兆円膨らんでおり、配当と合わせた資産効果個人消費を刺激するとの期待がある。

配当を株価で割った配当利回り東証1部平均で1.7%。株価が上昇した分、利回りは下がっているが、1%割れの長期金利(10年物国債)をなお上回っている。上場企業の利益自体も今の円安水準が続けば、輸出企業中心に上振れする公算は大きく、配当額はさらに増える可能性がある。

ただ、配当で払い出すことは、将来に向けた資金の使い道を見いだしきれていないことも意味する。1-3月期の企業の設備投資は5四半期連続で前期を下回った。雇用の拡大や賃金の引き上げも課題だ。日本経済全体が前に動き出すには、企業が成長へ向けて積極的に資金を活用することが重要になってくる。