今から押さえておく、来年以降の投資関連税制

新年度に入り「今年こそしっかりお金を殖やそう」と考えている人は多いだろう。預貯金、株式など運用商品の選択も大事だが、忘れてならないのは運用益にかかる税金だ。金融商品への課税の仕組みは14年以降、大幅に変わる。今のうちに基礎知識を頭に入れておこう。

投資の損益はようやくプラスになったが、その分税金も増えそうだろ考えている人は少なくない。株式投信に積み立てて運用している人は、12年秋まで散々だった運用成績も、昨年11月から円安株高で、ここへ来て損益率はプラスになっていることだろう。
だが、手放しに喜んでばかりもいられない。今、解約すると利益の10%(復興特別所得税を除く、以下同)が税として徴収されるが、3月末に成立した税制改正法で、株式や株式投信の売却益や配当、分配金にかかる税率が来年以降、現行の10%から20%に引き上げられるからだ。

運用益にかかる税については、ほかにも大きな改正があり、資産運用をしている人は、目先の利益に喜んでばかりいられないのは確かだ。一度おさらいしておくとよいだろう。
運用益にかかる税金は所得税と住民税だ。所得税は国が、住民税は地方自治体が「所得」(個人が受ける経済的利益)に課税する。知っておきたいのは運用益への課税方法が、所得税や住民税の原則的な課税方法とは相当違うことだ。
所得税や住民税では課税対象となる利益(所得)を給与所得など10種類に分類。それぞれの課税対象額の合計から所得控除を差し引いた額に応じ、税率も変わる。これを総合課税という。

ところが運用益への課税は総合課税の流れとは別に計算する分離課税という仕組みだ。現在、分離課税なのは預貯金や国債などの利子、上場株式や株式投信の売却益。株式や株式投信の配当、分配金は総合課税も選択できるが分離課税を選択する人が多い。
預貯金や国債の利子などは源泉分離課税といって利子が支払われた段階で、所得の多寡にかかわらず、その20%を徴収して課税は終わる。所得税の税率40%が適用される人でも20%で済むので高所得者には有利だ。
一方、上場株式や株式投信の運用で配当や分配金を得た人が、売却損を出した場合は、申告分離課税を使って節税できる。売却で生じた損失を他の株式の売却益や配当、株式投信の分配金などと相殺(損益通算)できる。

株式などは証券会社の「源泉徴収ありの特定口座」で取引する人が多い。その口座では売却益が出ると、そのたびに現在は利益の10%、来年からは20%が源泉徴収される。売却損が出た場合は、他の売却益と損益通算し税が還付される。
損益通算しても売却損が残った場合、配当や分配金について、税務署に確定申告で他の給与所得に合算しない申告分離課税の適用を申請。そうすれば、配当と分配金から源泉徴収された税額を売却損も含めて再計算することで、還付を受けられる。それでも損失が残ったときは、その損失をその後3年間(例えば13年に生じた損失は14年-16年)の確定申告に繰り越すことができるため、節税効果もある。
昨年秋からの円安株高で運用益を得た人は確実に増えている。だが、証券会社の特定口座で株式などの運用をする人でも、申告分離課税を活用していない人がいるようだ。運用益の税率引き上げは、明らかに資産形成にとってマイナス。申告分離課税を積極的に利用して、節税を図っていくことが大切だ。

税制改正法では、このほか毎年100万円までの上場株式や株式投信の運用益を非課税とする、少額投資非課税制度(日本版ISA)を14年から導入することが決まった。
また、申告分離課税の損益通算の範囲も16年から拡大される。対象外だった国債の利子や売却益なども上場株式の売却損と損益通算できるようになる。ただし、今は非課税の国債などの売却益を課税対象にすることになる。制度内容は国税庁などのホームページで確認しておこう。
株式売却益などへの税率引き上げに注目は集まるが、中長期的には他の金融商品との損益通算の範囲が広がり節税の選択肢は増す。そのメリットの方が大きいとの見方もあるようだ。