円安はどうやらこのあたりで一服か

この3ヵ月余りの間に対ドルで10円以上の円安が進行した。この大部分は、政府・日銀が連携したデフレ・円高対策への期待によるものと言えるだろう。

2%のインフレ率や3%の名目成長率を目指し、政府が公共投資などで需要を喚起しつつ、日銀が量的金融緩和を強化するとの見通しが、円供給拡大期待やリスク選好効果による円安を招いた。最近10年間の平均で消費者物価指数(CPI)の前年比がわずかながらマイナスの日本が、2%のインフレ率を達成するのは容易ではない。だからこそ、日銀はこれまで以上に大規模な量的緩和が必要になり、それによって円安が引き起こされるとの期待を連想させたのだろう。

また、この数ヵ月間、世界的にリスク選好に傾いたことも円安を促進した。低金利通貨である円は、もともとリスク選好下で最も売られやすい通貨だが、政策効果による円安進行への期待が増したために、なおさらリスク選好下で売られやすくなった。ドルは円以外の通貨に対しては総じて下落しており、決して「ドル高」ではない。リスク選好下での「円安」と言う方がふさわしい。つまり、円は金融緩和強化への期待とリスク選好の複合効果によって下落したのである。

しかし、円安進行は短期的には一服する可能性がある。
日銀の金融緩和への期待がさらに膨らむとは考えにくいからだ。
資産買い入れ基金を増額しても、日銀が民間金融機関から資産を買い入れるペースには限界がある。たとえインフレ目標の達成や雇用拡大が見込まれるまで「無制限に資金供給する」として資産買い入れを拡大していくとしても、期限を設けずに買い入れ期間を延ばす方式となるだろうし、買い入れペースを無尽蔵に拡大できるわけではない。また、「貸出増加を支援するための資金供給」は、あくまでもそれを希望する金融機関に対するものであるから、やはり資金供給増には限界がある。

1月21-22日の日銀金融政策決定会合で「2%のインフレ目標」が導入される可能性は高いが、現実的に考えると、「今後2年以内」などの具体的な目標達成期間を設けて、それが達成できない場合に日銀が責任を負うようにする可能性は低い。米連邦準備理事会(FRB)の「インフレ率の長期的なゴール」のように「中長期的なインフレ目標」とし、責任はあくまでも説明責任にとどめるのではないか。
中長期的にはインフレ期待がある程度高まることで通貨安要因となる可能性はあるものの、短期的に円供給が急増してインフレや通貨安を招くとの期待はピークアウトし、金融緩和強化期待による円安が一服すると考えられる。