ルネサスの“官民”出資は問題(前編)

自動車や家電に広く使われているマイコン(マイクロ・コンピューター)の世界最大手製造者であるルネサスエレクトロニクスが、深刻な経営不振だ。
これに対して、米国の買収ファンドKKR(コールバーグ・クラビス&ロバーツ)社が1000億円での買収を提案していたが、政府系ファンドである産業革新機構トヨタパナソニックなど、ルネサスの大手ユーザーである日本の製造業大手が組んで1000億円超の出資提案(株式の過半数取得)を検討していると報じられた(「日本経済新聞」22日朝刊)。
先般、JAL(日本航空)の再上場で企業再生支援機構が利益を得た。その余勢を駆って、政府系のファンドが次の案件に向かうつもりなのだろうが、このプランの適切性には大いに疑問がある。

大手メーカーと政府系ファンドが「官民」で出資を提案しようとする理由は、2つ考えられる。
まず、マイコン分野で世界最大のシェアを持つルネサスを、「外資」ではなく「日本企業」として残したいということだろう。政府系の産業革新機構が参画する建前だ。
加えて、KKRが買収した場合に、採算性の良い製品に特化し、個々のユーザーの要求に合った部品の供給が不確実になるのではないか、という懸念に対して、大手ユーザーが動いたことだ。
これらは「気持ち」としては分からなくもないが、いずれも問題がある。

(後編へ続く)