もはやノンアルコールは酒の代替に非ず

ノンアルコール飲料の勢いが止まらない。サントリーの調べによると、12年のノンアルコール飲料市場は、約3875万ケース(対前年比137%)と、4年前の15倍以上の規模に成長する見込みだ。
 
ニッセイ基礎研究所生活研究部門研究員の久我尚子氏によれば、ノンアルコール飲料市場が飛躍的に成長したのは、不況による消費の抑制や飲酒運転の罰則強化などによってアルコール市場が縮小した影響が大きい。そしてその成長をさらに加速させたのは、本来のターゲットである20~50代の男性以外にも予想外の広がり方をしたことだ。そのキーワードは「健康志向」。
「最近のノンアルコール飲料の味は、かなり本物に近づいています。そのうえ、肝臓によいとされるオルニチンが入っていたり、カロリーゼロだったりして、ただのジュースより健康的な飲み物になっているのです」(久我氏)
消費意欲が旺盛な団塊の世代は飲酒にも積極的だが、そろそろ健康に不安が出てくる年代でもある。
 
また妊娠中の女性や、メタボ検診をきっかけに健康に関心を持つようになった中高年、もちろん若い世代にとっても、カロリーゼロは魅力的。
「お酒を飲んだ気分を味わいつつ、しかも健康的」。これがヒットにつながった。
久我氏は冗談めかして言う。
「トクホ(特定保健用食品)マークのついたノンアルコール飲料が生まれる日も近いかもしれませんよ」
「飲み会」なのに全員ノンアルコール飲料で、誰ひとり酔っていない。そんな光景が現実になるかもしれない。