弱気の壁をよじ登る相場

相場は「弱気の壁をよじ登る」という。日本の株式市場は06年以降、世界の株式市場に対し、アンダーパフォームが続いている。世界トップクラスのさえないマーケットで、昨秋来でも10%のアンダーパフォームになっている。世界の株式市場でロング・ショート戦略をとっている人だったら、しこたま負けているに違いない。
内外の機関投資家のみならず、個人投資家にとっても極めて不人気な市場だろう。東日本大震災に加え、超円高、電力危機、タイの洪水もあった。不人気なのは当然である。しかし、それだけに、多くの投資家が日本株を持っていない、という見方ができる。
日経平均株価は9,000円の大台に乗せたといっても、東証1部のPBRは0.98倍、2部は0.68倍と、いまだ解散価値以下の水準に放置されている。ちなみに、世界市場の平均PBRは1.65倍である。赤字決算ならともかく、大幅増益予想なのにここまで売り込む必要があるのだろうか。

ちなみに、12年の日本企業のEPS成長率は18.0%と、グローバル平均の7.1%を大きく上回る見通しである。12年のGDP成長率は先進国のトップグループにいる。さらに、11年比で上向くのは日本だけだ。
現在、日経平均株価BPS(1株純資産)は9,182円になっている。仮に、世界平均並みのPBRに評価すると、日経平均株価は15,000円になるのだが…、まあ、そこまでは恐れ多いし、考えにくい。しかし、日本企業、および日本経済が東日本大震災、超円高、タイの洪水、欧州金融危機福島原発事故など多くのトラブルを克服しつつある状況下、せめて11年3月10日の東日本大震災直前の水準(PBR1.29倍で日経平均株価は11,600円台)はクリアしてもいいのではないかともいえる。

日経平均株価もPBRが1.02倍と、ようやく解散価値水準まで届いたので、しばらくはもみ合いになるだろう。為替、米国等にはもちろん引っ張られると思うが、年央にかけて11,000円を目指してもよい流れである、と考えている。外国人は持たざるリスクに脅え始めているはずだ。
したがって、ここは徹底した押目買い作戦が有効だろう。もちろん、欧州情勢は引き続いて気がかりであるが、昨秋~今春にNYダウは20.7%、NASDAQ指数は26.4%上昇し、ギリシャ危機のステークホルダーである独DAX指数は36.3%の急騰劇を演じている。この強さはマスコミがヒステリックに報じるユーロ崩壊から恐慌への突入はない、との市場の声なのだろう。
逆に、投資家の恐怖心を示すVIX指数は昨夏48ポイントから直近17ポイント割れ寸前と、急低下をみせている。欧州情勢を過剰に心配しているのは、遠く離れた日本の投資家だけかもしれない。