メガバンクは底打ち、あとは地銀を待つばかり

アナリストの事前予想は下回ったが、トヨタ自動車が今3月期の利益見通しを若干上方修正し、電機大手に始まった「輸出企業は全滅」とのムードは薄らぎつつある。7日の日経平均株価が11円安と底堅かったのは、世界の景気回復への期待がじわじわと広がっていることを映している。何よりもの証拠が世界の銀行株高。日本でもメガバンクは年初来で16-18%上昇しており、まだ値動きが鈍い地方銀行株への波及を期待する声も増えている。

日本でもオンライン証券などで売買ができるが、ウェルズ・ファーゴHSBCJPモルガン・チェースバークシャー・ハザウェイなど世界の有力な金融機関の株式に投資する米国の上場投資信託(ETF)が一部で話題になっている。チッカーシンボルはIXG。スタンダード&プアーズ・グローバル金融株指数への連動を目指しており、年初来の上昇率は6日現在で14.2%に達している。
「下がったからその反動で値上がりしているだけ」といえばそれだけの話だが、重要なのは、株価チャートを細かく見ると昨年9月下旬に1回目、11月下旬に2回目の底を入れ、ダブルボトム型の上昇になっていることだ。リーマン・ショック後にボルカールール、自己資本比率規制の強化、欧州債務危機と逆風が吹き続けたが、ようやく最悪期を通り過ぎたことを、チャートは強く示唆している。

日本に関係ないと思われるかもしれない。確かに、20年前にグローバル金融株ETFが存在していたら、組み入れ上位には日本興業銀行住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行などがずらっと顔を並べていたことだろう。いまグローバルETFで日本物を大量に組み入れているのは、グローバル国債ETFぐらいしかない。IXGでは米国、カナダ、オーストラリア、英国、スペインの銀行の後、ようやく12番目に三菱UFJフィナンシャル・グループが顔を出す。
しかし、世界で1日に何兆ドルも為替が取引される時代だ。金融機関の経営環境は世界中で連動している。日本のメガバンクの株価も三菱UFJは昨年11月25日、三井住友フィナンシャルグループは11月10日、みずほフィナンシャルグループは11月21日にそれぞれ底を入れ、静かな上昇基調をたどっている。「自社株が値上がりすると銀行は貸し出しに積極的になる」という経験則もある。銀行株の上昇は景気が好転する最初のサインでもある。

「日本のどこに資金需要があるのか」との反論もあろう。しかし、全国銀行協会が7日に発表した1月末の全国銀行の貸出高は1年前に比べて3兆8824億円、率にして0.9%増加した。昨年12月の1.2%増に比べて増加率がやや鈍ったのは気になるが、それでも昨年9月以降5カ月連続で前年同月の水準を上回った。日本政策金融公庫の中小企業景況調査も、金融機関の貸し出し態度が一段と緩和している様子を示している。
ただ、日本の金融機関全体を見渡すと、まだ好循環に乗れていないところも多い。国内31の銀行株を対象に計算している業種別日経平均の銀行株指数は年初来上昇率が0.3%にとどまり、すべての業種を網羅した日経500種平均の上昇率4.3%を大幅に下回っている。千葉銀行横浜銀行静岡銀行中国銀行などが安くなり、メガバンクの2ケタの上昇を打ち消しているからだ。
しかし、過去を振り返ってもメガバンクだけがいつまでも一方的に上昇するわけではなかろう。地銀株にも今後、出遅れ感を意識した資金が入ってくると思われる。「国債が暴落したら地銀などひとたまりもない」と考えている人もいるが、大都市圏の力のある地銀は一般に貸し出しをしっかり伸ばしており、国債への依存度は小さい。「景気が回復局面に入った」という見方が確かならば、次は地銀株高との好循環が始まる可能性もある。