IMFの資金増強に米国が当然の反発

欧州の債務危機の封じ込めに向けて、国際通貨基金(IMF)が表明した5000億ドル規模の資金増強に暗雲がたれ込める。
発言権の拡大をもくろみ、拠出に前向きな新興国に対し、最大出資国である米国が強硬に拠出を拒んでいるためだ。国際社会の足並み乱れが市場の不安を招く恐れがでてきた。

「追加拠出する意図がないことは、すでに各国に伝えてある。」IMFが18日に資金増強を目指す方針を発表すると、米財務省報道官は間髪を入れずにこう表明し、米国の積極的な関与を期待する欧州や国際社会にくぎを刺した。
IMFが増強を目指す5000億ドルの内訳は、欧州連合(EU)主要国が表明済みの2000億ドル規模、残りを主要20カ国(G20)からの拠出でまかなう考えだった。
だが、デフォルト問題などで昨年表面化した米国の財政不安がある。野党共和党は徹底した歳出削減を求めており、議会運営に苦慮するオバマ政権は資金拠出には及び腰。米国は「IMFは欧州の努力を補完するだけ」と主張しており、IMFの財政基盤の強化そのものに慎重な姿勢を崩さない。
米国の消極姿勢は第2位のIMF出資国、日本にも微妙な影響を与えている。日本政府内には資金拠出を模索する動きはあるものの、外交交渉などとの関連で「米国を刺激したくないとの空気が強い」(IMF関係者)。

一方、ブラジルや中国といった新興国は追加拠出に前向きで、IMF関係者は「昨年の半ばには拠出の打診があった」という。欧州危機の新興国への波及を食い止めたいとの狙いに加え、先進国が牛耳るIMFで発言権を強めたい思惑が大きく、日米は警戒を強めている。
日米の後押しが期待できない中で、新興国だけで目標額に届くかどうかは流動的だ。危機拡大の安全網となる欧州金融安定化基金(EFSF)も一部格付け会社から格下げされ、融資能力が低下しつつある。危機拡大の防波堤が整備されず、世界経済に悪影響が及ぶ懸念も広がってくる。