エコノミストが予想する12年の株価、為替予想

今年の株式、外国為替市場は、東日本大震災と欧州債務危機に翻弄されたといえる1年だった。エコノミストによる12年の予想をみてみると、年前半は欧州危機による世界経済の停滞で、株価は低迷が続き、日経平均株価が8,000円を割り込む恐れがあり、円相場は1ドル75円を突破し再び史上最高値を更新するとの見方も出ている。
一方で、年後半には、株価が10,000-11,000円まで上昇し、円相場も80円台前半の円安に振れると期待している。いずれも欧州の安定化と米国経済の回復が条件で、結局は来年も海外頼みとなりそうだ。

株価について「欧州危機による金融システム問題と世界経済の後退は、さらに深刻になる」と、悲観的なのはニッセイ基礎研究所の矢嶋康次主任研究員の見方だ。平均株価の安値を7,000円と予想し、リーマン・ショックの打撃で09年3月10日に付けたバブル後最安値(7,054円98銭)と同水準に迫る可能性があるとみる。
第一生命経済研究所の嶌峰義清首席エコノミストも「欧州問題がくすぶり続ける間は、8,500円を挟んだレンジ内で推移する」としている。欧州各国の足並みの乱れで抜本的な解決策は打ち出されていないうえ、欧州向け輸出の停滞で中国などの新興国経済も変調。牽引役不在による「世界同時不況」のリスクが高まっている。
野村證券木内登英チーフエコノミストは「株価反転のきっかけ」として、欧州中央銀行(ECB)の国債買い取りの拡大を挙げる。さらに米国景気も追加金融緩和などで持ち直し、「夏場から上昇基調になる」との見方では一致している。11,000円の強気の予想も出ているが、欧州危機が沈静化しない限り、世界経済の負の連鎖は断ち切れない。

為替についても、円高傾向に歯止めがかかるとの見方は少なく、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「当面、円高ドル安圧力がかかりやすい状況が続く」と指摘する。欧州危機の解決のめどが見えず、30日にユーロの投げ売りで1ユーロ100円を割り込むなど、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まり、消去法で選ばれた円へのマネー流入が続くとみられるためだ。
さらに、ECBが利下げを継続するとの見方が多いほか、米連邦準備制度理事会(FRB)も量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るとの観測がある。通貨安誘導も狙った緩和合戦に日銀が対抗できず、円高が加速し、1ドル=73円台に突入するとの予想も出ている。
こうした欧米当局の政策が効果を発揮し、欧州危機が沈静化に向かうのは、年後半となる。野村證券の木内氏は「リスク回避が弱まる」と期待。ユーロ買い戻しで、対ドルでも円安に振れるとの見方が大勢だ。
ただ、それでも円の安値は1ドル79-83円と限定的。輸出企業の採算はなお厳しく、海外移転による空洞化がさらに加速する懸念が拭えない。