最近のドル円相場は嵐の前の静けさか

このところの方向感が乏しく、取引も閑散なドル円相場をめぐって、市場では「嵐の前の静けさ」との指摘が出ている。
通貨オプション市場では、1カ月物のインプライド・ボラティリティ(IV)が7.2%と07年7月以来、4年ぶりの低水準で推移。JPモルガンチェース銀行は26日付のレポートで「これまで何度も繰り返されてきているように、ボラティリティが極端な水準まで低下すると、その後ドル円は大きな動きを見せ始める」と指摘。「94年12月23日の週のボラティリティの低下はその後4カ月間にドルが101円から79.75円まで下落する嵐の前の静けさだった」とし、このところのドル円の値幅の狭さが「来年早々のドル円相場に対する警戒信号ととらえたほうが良いかもしれない」と警鐘を鳴らしている。

みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏も、
(1)IMM通貨先物取引に見る投機筋のポジションは年末もドル買い持ち高が調整されず、むしろ加速
(2)ドル円ボラティリティは07年7月以来の低水準だが、過去を振り返ると著しく下がったボラティリティ円高により解消されるケースが多い
──などとして、「嵐の前の静けさを示す兆候として警戒が必要だ」と口を揃える。
同氏は「欧州債務問題を巡る状況が明確に改善しない間は、ドル円ボラティリティが跳ねることはなさそうで、基本的にそれがメインシナリオだろう」としながらも、「年末商戦で堅調が維持されていた米経済指標の下振れが逐次明らかになり、これと同時期に欧州債務問題への懸念が和らぐようなヘッドラインが重なるようだと、足元のドル買い相場の巻き戻しが一気に進み、円相場も巻き込まれるように騰勢を強める可能性がある」と指摘している。

市場では、ドル円の見通しについて、約2カ月ぶりの水準まで上昇している米国の2年債利回りに注目する声も出ている。シティバンク銀行チーフFXストラテジスト、高島修氏はドル円底堅い理由のひとつに、米国の2年もの金利の上昇があるとの見方を示した上で、「米金利上昇がここで止まれば、ドルにとってのプラス要因がほとんどなくなるので、ドル円にとってはネガティブとなる。値を崩す可能性さえある」と語っている。

東京市場での取引が少なくなる年末年始は、これまでも投機筋が狙いすましたかのようにドル売り円買いを仕掛け、値が飛んだことがある。今週末も注意しておくに越したことはない。