トヨタとBMWの業務提携の先にあるのは

トヨタ自動車と独BMWは、環境関連の技術開発などで業務提携を決めた。ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の心臓部となる電池などを共同研究する。世界の自動車業界では開発負担の軽減や国際規格の主導権を握るため、合従連衡が相次ぐ。だが、スズキと独フォルクスワーゲン(VW)の提携のように当初の思惑が外れ、泥沼の争いに発展するケースもあり、カーウオーズは新たな局面を迎えている。

「次世代のリチウムイオン電池開発を進めているが、競争が激しい。連携でスピーディーに開発が進む」。12月1日、都内で行われた会見でトヨタの内山田竹志副社長はこう強調した。
トヨタは97年に世界初のHV「プリウス」を開発し、電池を含むHV技術で世界の先端を行く。そのトヨタでさえ「オール自前主義」での開発は困難であることがうかがえる。
この夏、トヨタは米フォード・モーターと、スポーツ用多目的車(SUV)などのHVシステム共同開発で合意。マツダ富士重工業にはHV技術を提供する。米EVベンチャーテスラ・モーターズとも資本・業務提携し、新型車を共同開発するなど、世界中に環境対応車(エコカー)ネットワークを張り巡らせる。
トヨタはHV、EV、さらには家庭の電源で充電可能なプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車と全方位の開発を手がけてきた。未来の本命エコカーが何になるのか、見きわめるのが難しいからだ。
事実、プリウスを世に送り出した当時、世界の自動車業界では、燃料電池車がエコカーの主流になるとの見方が強かった。HVはメジャーとなったが、他方式の開発もおろそかにできない。全方位開発が可能なのも、「巨人」トヨタならではといえる。

ただ、エコカー開発については、日産自動車・仏ルノーと独ダイムラー三菱自動車と仏プジョーシトロエンなどEVを中心にグループ化が進んでいる。08年のリーマン・ショック、歴史的な円高水準といった逆風もあり、トヨタも自前主義から脱却し、陣営構築を急ぐ。BMWとも電池の共同研究を通じ、HVメンバーへの参加を促すことができる。また、HV陣営の構築を急ぐ背景には「市場のEV化を阻止する」(関係者)狙いもあるようだ。
とはいえ、提携も一筋縄ではいかない。スズキとVWの提携など、当初の思惑が外れ泥沼の争いに発展するケースも出てきた。トヨタBMWに関しても「どこかの段階で両社の思惑がぶつかるはず。そこでどう折り合いを付けていくか」(業界アナリスト)との見方も強い。

エコカー開発競争の激化で部品メーカーにも厳しさが増す。トヨタは、エコカーの心臓部となる電池開発はパナソニックグループと進めてきた。その一方でBMWとも共同研究を始めることになる。
トヨタは、来年1月に国内で初めて発売するPHVにもパナソニックグループの電池を採用。しかし、トヨタ首脳は「まだコストが高い。期待のレベルではない」と他社の電池も検討する考えを示すなど、部品を納入する側も安穏としていられない。
世界規模で進む次世代エコカーの開発競争。勝者はどこになるのか。さまざまな思惑を胸に、参加プレーヤーの戦いは続く。