またも日銀に敗れたヘッジファンド勢

日本の国債市場が機能不全に陥り、ニューヨークのヘッジファンドは代替として米国債市場で日銀金融政策に関する思惑売買を繰り広げていた。「日銀の出口近し」との判断から、米国10年債は記録的な空売りポジションが積み上がっており、その規模はCFTC(米国商品先物取引委員会)が毎週末発表する先物売買データで検証できる。7月24日発表のデータではロングが約53万件、ショートが約103万件、ネットで約50万件とされる(1件あたり10万ドル)。
その結果、日本10年国債の利回りが0.1%を突破した時点で、米国10年債利回りが2.99%と3%近くまで急騰する局面もあった。当時の相場記事を読み返すと「ウォール街は日銀金融政策決定待ちで、米10年債利回りはこの1カ月で最高水準の2.99%をつけ、3%台に迫っている」などと書かれていた。
しかし、ヘッジファンドの苦々しげな言い回しを引用すれば、日銀会合での結果が「長期金利をいじるだけの微調整」に終わり、彼らのもくろみは外れた。
米国10年債利回りも30日(現地時間)の取引終了時点の2.98%近くから急落、31日は2.96%で引けた。ヘッジファンドの当惑ぶりがうかがえる。

ヘッジファンドには日本国債空売りを仕掛けて失敗を繰り返した苦い経験がある。日本国債トレードは、その事故率の高さから「ウィドウ・メーカートレード(Widow Maker Trade)」などと呼ばれたものだ。「もう日本国債にはこりごり」と今回大損したヘッジファンドの関係者はぼやく。教訓として「日銀には逆らうな」が合言葉になりそうだ。

一方、米国の株式市場では、長期金利変動幅が拡大しても日銀の緩和継続を歓迎する姿勢だ。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はタカ派的との見方も根強く、「パウエル・プット」は期待できそうにない。FRB量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)への転換は意図せざる経済ショックの可能性をはらむ。そこで、FRBが市場から引きあげる流動性を、日銀が補ってくれる、との期待感が漂う。ミスタークロダのおかげで流動性相場も持続できそう、との期待が感じられる。

黒田総裁が記者会見で19年10月の消費増税をリスク要因の具体例として挙げたので、日銀緩和は20年まで続くか、との質問もあった。FRB欧州中央銀行(ECB)が量的緩和終了・縮小に動くなかで、日本が過剰流動性の輸出国になっていることを改めて実感した。
外為市場では円安が進んでいる。ドル・ユーロは大きく動かず、対円でのドル高が突出している。今回ばかりはほぼ同時開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は影が薄く、日銀効果でドル高・円安が進行中だ。