仮想通貨の取引利益は雑所得

国税庁ビットコインなどの仮想通貨に関して、取引で生じる利益が「雑所得」にあたるとの見解をまとめた。今年は仮想通貨の売買で資産を億円単位で増やした人が多く誕生している。こうした「億り人(おくりびと)」が多額の税金を支払うために、仮想通貨の換金売りが広がるのではないかとの見方がある。急ピッチで上昇した仮想通貨市場に新たなリスク要因が浮上している。

国税庁は9月上旬、ビットコインを使用することで生じた利益について「原則として雑所得に区分される」との見解をホームページの「タックスアンサー」に掲載した。「雑所得」は所得額に応じて5~45%の累進税率がかかる。最大の45%となるのは所得が4000万円超。国税庁が税務上の扱いを明確にしたのは初めてだ。

今までは仮想通貨を巡って税務上の扱いがはっきりしておらず、納税申告をしていなかった人も多いとみられる。ただ、国税庁が見解を示したことで、仮想通貨で利益を得た人の納税意識は向上しそうだ。税理士の丸山正行氏は「将来的には取引額が大きい投資家を中心に税務署が調査に動く可能性もある」と指摘する。

判断が難しいのはビットコインイーサリアムに交換するなど仮想通貨間の取引をした場合。仮想通貨間の取引で得た利益も課税対象となるかどうか国税庁は明確に言及していないが、丸山氏は「損益が円換算できるのであれば課税対象に含まれるだろう」と分析する。例えば、10万円で購入したビットコインが40万円に値上がりし、その全額をイーサリアムに交換すれば差額の30万円分が「利益」と見なされて課税されることになりそうだ。

このことは仮想通貨の投資家にとって大きな意味を持つ。手元に日本の法定通貨である円を持っていなくても、多額の税金を円で支払う必要が出てくるためだ。来年3月の納税期限の前に、税金の支払いのために円を確保しようとビットコインなどの売却に動く人が増える可能性がある。仮想通貨ブロガーのマナさん(ハンドルネーム)は「(年末にかけて)仮想通貨の売りが加速するかもしれない」と指摘する。

仮想通貨の代表格であるビットコインは9月12日午前11時時点で約4,200ドル。9月初めには5,000ドルの大台を突破したが、その後は上値が重くなっている。中国当局が仮想通貨の取引所を閉鎖すると伝わるなど、懸念材料が増えていることが要因。今後は“日本人の換金売り"という新たなリスクを抱えることになりそうだ。