日経平均株価の年初来高値更新を牽引する意外な業種

12日の東京株式市場で日経平均株価は5日続伸した。前週末比158円66銭(0.84%)高の1万9155円03銭と、連日で年初来高値を更新。昨年末の株価(1万9033円71銭)も上回り、年末が迫る中でなんとか「原点」に回帰した格好だ。米長期金利の上昇や原油市場の底打ちで、運用リスクをとる動きが加速。いわゆる「トランプ効果」に市場の関心は集まりがちだが、牽引役の顔ぶれは意外な姿を映し出した。

足元の上げ相場を牽引しているのは自動車や銀行だが、昨年末と比較すると景色はやや異なる。業種別日経平均を昨年末と比較すると、鉄鋼が7%上昇。機械も3%上げ、建設機械を手掛けるコマツ日立建機は水準を3割超切り上げた。建機や鉄鋼に共通するのが中国の存在だ。中国景気が持ち直すなか同国の建設需要が回復。鉄鋼製品や建機の需給改善が見直し買いを促した。

円安が加速するトランプ相場に乗っているように見える自動車株は、視点を昨年末からの値動きに置くと意外にも苦戦する。業種別の「車」は2%下落した。足元の円安で輸出採算の改善が期待されるものの、稼ぎ頭の北米の新車販売に頭打ち感が浮上。各社が米国向け輸出拠点としてメキシコなどで生産拠点を整備しただけに、トランプ次期米大統領が公言している北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しによる悪影響も心理面での重荷になっているようだ。

米国を巡っては利上げの影響にも関心が高まっている。13-14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが市場で既定路線となるなか、「市場が関心を寄せているのは来年の利上げのペース」(SMBC日興証券の太田千尋投資情報部部長)。年2回の利上げが中心シナリオとみられるが、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長がFOMC後の会見で追加利上げに前向きな考えを示唆した場合、市場では「1ドル120円程度まで一気に円安・ドル高が進む可能性がある」(外資系証券)との声もある。

このまま年末を迎えれば、日経平均のチャートには5年連続で終値始値を上回る「陽線」が引かれることになる。実現すればバブル経済に沸いた80年代以降で初めてだ。トランプ相場の危うさを抱えながらも、市場では日経平均が来年にも2万円を超えるとの予想が増え始めた。ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘氏は「日本株の先高観に変わりは無い」と指摘する。来年1月に就任するトランプ次期米大統領の経済政策の中身は何か。市場の視線は米国に注いでいる。