ミセス・ワタナベ 今回も投機筋に敗北?
外国為替市場でヘッジファンドなど海外投機筋との激しい攻防を繰り広げてきた日本の個人投資家(ミセス・ワタナベ)が、ついに白旗を揚げたとの見方が出ている。
投機筋主導のドル高・円安が続くなか、巨額のドル売りで対抗してきたミセス・ワタナベだが、ついにドル買いに転じたことを示すデータが出てきたのだ。マーケットで大きな存在感を持つ個人投資家の外国為替証拠金取引(FX)で、ドル買い・円売りがさらに増えるのか、今後の焦点だ。
ミセス・ワタナベの間でドル買いが優勢になり始めたのは、円相場が一時1ドル125円台に下落した2日とみられる。ある大手業者では、それまでのドル売り越しが、買い越しへと転じた。125円という節目の突破を受けて、ドル売り・円買いの深追いは妥当でないと判断したもようだ。
3日になってもドル買い優勢の状態は続いたようだ。有力FX業者4社(GMOクリック証券、外為どっとコム、セントラル短資FX、マネーパートナーズ)に対して筆者が実施している定例聞き取り調査(毎週水曜日の米国市場終了時点)の結果を見ると、3日時点で合計約3億ドルのドル買い越し(対円)となっている。1週間前には約11億ドルの売り越しだったので、この間に差し引きおよそ14億ドルのドル買い・円売りがあった計算になる。有力4社のデータであり、業界全体の傾向を反映していると考えられる。
ドル買いの中身も見てみると、有力4社のデータでは、既存のドル売り円買いポジションの解消と新たなドル買い円売り持ち高の形成とがほぼ7億ドルずつ半々だった。前者の中には、一定の評価損を抱えると自動的に反対売買するロスカット機能が発動したケースもあったようだ。つまり損失確定のドル買い戻しを強いられたケースだ。一方、後者は今後さらにドル相場が上がることを想定した新規の取引。ドルベアの見方を変えたミセス・ワタナベが増えてきたことを意味する。
市場関係者がFX投資家の動向に関心を払うのは、その影響力が大きいからだ。東京外国為替市場で金融機関が行う為替取引の総額のうち、約23%は個人のFXから派生したものとされる(大西知生・ドイツ証券外国為替営業部長が14年春にまとめた推計値に基づく計算)。FX投資家は相場の流れと反対に動く逆張りが得意であり、順張り派の投機筋と対峙するケースも多い。
実際、5月20日以降、投機筋が主導するドル高が進んだ局面でも、巨額のドル売りで対抗してきた。背景には米経済の先行きに対する慎重な見方があったとみられ、上述の有力4社では5月27日までの2週間のドル売りが50億ドルを超えた。今の円安トレンドが始まった12年11月下旬以降、2週間でこれだけのドル売りが出た例はない。にもかかわらずドル高・円安が進行。投機筋との攻防戦でミセス・ワタナベは劣勢を強いられたことになり、いつドル買いに転じるかが注目を集めていた。
FX投資家のドル買いがさらに増えれば、円安に拍車をかけるかもしれない。そうなるかどうかを左右する要素として重要なのが、6月5日発表の5月米雇用統計だ。強い中身になり、米国の利上げ時期前倒しが意識されれば、ミセス・ワタナベのドル買い・円売りに勢いが付くかもしれない。もっとも、ドルが大幅に上昇する展開になると、いったん利益確定の売りが増える可能性もあり、そうなれば逆にドル高への歯止めとなる。