メガバンクの国際信用力が上昇

日本の大手銀行の国際的な信用力が高くなってきた。欧州債務危機で欧米の銀行の財務が悪化する一方、日本勢の経営が相対的に安定しているため。ドル資金を運用する米MMF(マネー・マーケット・ファンド)は邦銀への投資を大幅に増やしていて、ドル調達で欧米より優位に立つ。信用力を示する市場の評価でも3メガ銀がトップ5に入った。邦銀の海外事業の拡大を後押ししそうだ。

MMFは金融機関にとってはドル資金の有力な調達先で、資産残高は約2.7兆ドル規模。
欧州危機で、米MMFは欧州銀が発行するコマーシャルペーパー(CP)などへの運用資金を大幅に減らした。09年は運用資産の約30%がユーロ圏の銀行向けだったが、昨年末は9.9%。日米欧の中央銀行は昨年末にドル資金供給を拡充したものの、欧州銀は以前よりもドルが調達しにくい状態が続いている。
欧州系の格付け会社フィッチ・レーティングスMMFの銀行別投資先ランキング(11年12月末)調査によると三井住友銀は昨年9月の11位から邦銀初の2位に浮上した。昨秋に米ドルCPの発行枠を拡大、ドル調達を積極化した。三菱東京UFJ銀行も13位に入った。

中長期の調達でも邦銀が優位になっている。1月に三井住友銀が米国で発行したドル10年債のスプレッド(米国債との利回り差)は約2%で、同時期に社債を発行した米ゴールドマン・サックスの半分程度。低い分、有利にドルを調達できた。
銀行間取引の標準的な調達金利を示すロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は11年9月に日仏で逆転。10日時点でも三菱東京UFJ銀行が0.50%。BNPパリバ(0.61%)より低い。信用力を示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率でみても、3メガ銀の信用力は上位3-5位を占める。

邦銀は有利なドル資金調達を生かし、海外展開を加速する。欧州金融機関はアジアなど新興国や北米向けなどの融資縮小を迫られているため、邦銀は調達したドルをアジア、米国を中心に海外事業の拡大に充てる方針。11年12月末の海外向けの融資残高は前年比3割程度増えた。欧州金融機関は経営悪化を背景に資産の売却を迫られており、邦銀による買収が増える可能性も大きい。
90年代に日本の不良債権問題が深刻化、邦銀はドル調達で欧米銀に比べて上乗せ金利を求められる「ジャパン・プレミアム」が発生したが、立場が逆転した形だ。