京都議定書からの日本離脱に産業界歓迎

京都議定書延長からの日本離脱が確実となったことを受け、「議定書延長に断固反対」を訴えてきた産業界からは歓迎の声が上がっている。一方、先進国が途上国の温室効果ガスの排出量削減を支援した場合、自国の削減量に算入できる「クリーン開発メカニズム(CDM)」の仕組みを活用できるかについては解釈が分かれており、CDMの活用に積極的な大手商社は気をもむ展開になっている。

「(京都議定書の延長を受け入れれば)産業空洞化に拍車がかかり、致命的なことになる」(日本鉄鋼連盟の林田英治会長)と主張してきた産業界。「延長受け入れは生産の大幅な制限を強いられるに等しい。何とか踏みとどまった」。素材メーカーの幹部は胸をなでおろす。
日本が京都議定書延長に賛同すれば、日本よりエネルギー効率が劣る新興国が排出量を気にせず増産するのを指をくわえてみるしかない。警戒感を強めた産業界は、「同じ土俵で競争することが必要だ」(自動車業界)と訴えてきた。今回、日本に削減義務が課される現状は避けられる見通しとなり、「基本姿勢を貫いてくれた」(素材大手)と評価する。
延長反対だけではなく、日本の貢献をアピールするためにも、「省エネ技術の普及で存在感を示すべきだ」との声も多い。「排出削減につながるとともに商機拡大にもなる」(電機大手)と期待をかける。

一方、京都議定書に取り決めがあるCDM活用をめぐり、事態の推移を見守っているのは大手商社だ。新興国で、環境技術を駆使した温室効果ガス排出削減事業を行い、それに応じた排出枠を取得できる制度で、大手商社は獲得した排出枠を、日本国内の電力会社などに販売している。
日本政府は、仮に京都議定書の延長に加わらなくても独自に排出削減努力を進め、引き続きCDMを活用する方針を示しているが、現在のところ明確な規定はなく、交渉の推移を見守っている状況だ。