QE3の恩恵、日本は少なく

米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第三弾(QE3)決定を受け、世界の株価指数が上昇基調を強めている。米景気の先行き懸念が後退、これまでリスクを警戒していた投資家の資金が株式に向かった。
 
発表当日の13日に米ダウ工業株30種平均は、約4年9か月ぶりの高値をつけた。14日は日経平均株価が前日比160円強(1.8%)上昇し、香港、シンガポール、韓国などのアジア株も1-3%上昇。欧州株も軒並み買われた。
ベイビュー・アセット・マネジメントの佐久間康郎執行役員は「FRB住宅ローン担保証券の無制限の買い入れという強い緩和策を示したことによる投資家心理の改善度は大きい」と指摘。「日経平均株価は9,700円をめどに上昇する」とみている。
 
もっとも先行きについては、慎重な見方も多い。中国景気の低迷や、欧州の債務危機の再燃の懸念もくすぶるからだ。
日本株の出遅れ感はなお解消されていない。世界の株価が今年最安値を付けた6月4日以降の値動きを見ると、日経平均株価の上昇率は10%強と、欧州株(約20%)やシンガポール(約14%)、韓国(約13%)などに比べて見劣りする。
 
「日本は欧州の景気減速の影響を受けやすい」とメリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノミストは指摘する。欧州への輸出の約6割は耐久消費財が占め、同比率が2割強の米国を上回る。中国の景気減速も日本企業の業績に影を落とす。
QE3の発表後に一時、円は1ドル77円台前半と約7か月ぶりの水準に上昇。日銀の金融政策次第でさらなる円高リスクがある。日本株の先行き懸念はなお晴れない。