日銀が金融政策調整に踏み切る

日本銀行は31日の金融政策決定会合で、長短金利水準を据え置いた上で、長期金利目標について「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」ことを賛成7、反対2で決定した。
黒田東彦総裁は記者会見で、長期金利の変動幅について、これまでのプラスマイナス0.1%から「その倍程度に変動しうることを念頭に置いている」と説明。「金利水準の引き上げの意図はまったくない」とし、金利が急上昇する場合には国債買い入れを実施すると語った。

今回の金融政策の調整は、物価の低迷で2%物価目標が遠のき、超低金利政策の長期化が予想される中、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化するのが狙い。
19年10月に予定されている消費税率引き上げの影響も含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とした政策金利フォワドガイダンス(指針)も導入する。
黒田総裁は「不確実性を踏まえて当分の間、極めて低い長短金利を維持することにコミットした」とした上で、早期に緩和の出口に向かったり金利を引き上げたりする観測を否定できると述べた。

指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れについても年間6兆円ペースを据え置いた上で、「買い入れ額は上下に変動しうる」とすることを全員一致で決めた。個別銘柄の株価をゆがめているとの指摘を受け、日経平均連動型を減らし、TOPIX連動型を増やす。
TOPIX日経平均225、JPX日経400の3指数に連動するETFを従来の3兆円から1.5兆円に減額。TOPIX連動型を2.7兆円から4.2兆円に拡大する。

日銀当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高を長短金利操作の実現に支障がない範囲で現在の水準(平均して10兆円程度)から減少させる。8月積み期は5兆円程度となる見込みという。
誘導目標である長期金利(10年物国債金利)は「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)は「マイナス0.1%」で変更はない。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)は「約80兆円」をめどとしつつ弾力的な買い入れを実施する。ETFとともに、年間900億円の不動産投資託(J-REIT)の買い入れも上下に変動しうるとしている。

最近の報道では日銀が副作用に何らかの対応策を取る可能性が指摘され、市場でも見方が分かれていた。報道を受けて長期金利が上昇したため、日銀は23、27、30日、指定した利回りで金額に制限を設けずに国債を買い入れる指し値オペを実施した。指し値オペを月に3度実施するのは初めて。
農林中金総合研究所主席研究員の南武志氏は、日銀が政策調整に踏み切った背景として、物価が低迷する中で今後も現行政策を続ける必要があり、「今のままでは、さすがにまずいという意識があった」と分析。日銀の発表文では現状の政策の調整が「枠組みの強化」と記載してあるとして、追加緩和との「誤解を生む」と批判した。
発表文では、物価の低迷が続く背景として「企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや値上げに対する家計の慎重な見方の継続といった要因が作用している」とし、2%の物価目標の実現には「これまでの想定より時間がかかることが見込まれる」と認めた。

会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)は18年度が1.3%上昇から1.1%上昇、消費増税の影響を除き19年度が1.8%上昇から1.5%上昇、20年度は1.8%上昇から1.6%上昇に下方修正された。
黒田総裁は「19年度2%達成という従来の見通しは後ずれしている」と述べた。ただ「物価のモメンタムは維持されている」と説明し、「現時点では、追加緩和は必要ない」との考えを示した。
決定会合の「主な意見」は8月8日、「議事要旨」は9月25日に公表する。

ふるさと納税が発足10年を迎え転換点

ふるさと納税が制度発足から10年を経て転換点を迎えている。17年度も全国の自治体の受け入れ額は過去最高額を更新したものの、伸び率は縮小した。返礼品競争の自粛を促す総務大臣通知を受けて、返礼の見直しや使い道の明確化などの動きが広がったが、豪華な返礼を続けた自治体が額を伸ばした。応援寄付金という本来の趣旨が問われている。

17年度のふるさと納税は総額で3653億円。前年度比の増加率は28%で、16年度(72%)から半分以下となった。全1788自治体のうち受け入れ額が増加したのは61%、減少したのは39%。増加の割合は16年度よりも11ポイント減った。
たとえば、飛騨牛の返礼が人気の岐阜県高山市。受け入れ額は2千万円減り2億7千万円となった。5割だった寄付額に占める返礼品の金額(返礼率)を17年4月の総務大臣通知に従い3割以下に見直した影響が大きい。例えば牛肉400グラムの返礼に必要な寄付額を1万円から1万5千円に上げた。変更前の駆け込みもあって17年度は微減だが、18年度は停滞が色濃い。
同市は社会的意義などを訴える返礼品を開拓する。17年度は特別支援学校で作った木製玩具を打ちだし、生徒の励みになると総務省も評価する。ただ、申し込みは3件。「お得さで返礼品を選ぶ人が多いのが実態」と担当者はため息をつく。
クエ鍋や近大マグロが人気の長崎県五島市は返礼率見直しで1億3千万円と4千万円減った。ふるさと納税を原資にICT(情報通信技術)を整備した小中学校の子どもの様子を動画で発信し始めたが、「反響ほどには金額が伸びている手応えはない」(同市)。

逆に通知が追い風となった自治体もある。17年度の受け入れ額は「1億円未満の増加」が全自治体の50%。前年度より減ったが割合は最も多い。
通知前から返礼率が3割だった岡山県真庭市は200万円とわずかだが増え、1億1千万円となった。「ほかが過度な返礼品を見直したため」と担当者は分析する。これまで返礼品のコメの量で見劣りしていたが、「同じ割合なら量ではなく質で比べてもらえる」。カキ殻を肥料とする地元農家こだわりのコメが注目され始めたという。
宮城県石巻市も地味ながら自慢の返礼品に期待を込める。東日本大震災後は復興のシンボルとされた「サバ缶」を返礼品としていたが、あまりの人気でふるさと納税に回せる商品がなく中止。目玉不在で受け入れ額は減少してきたが、17年度は2億4千万円と5千万円の増加に転じた。
新たなけん引役はタラコやカマボコ。地元では知る人ぞ知る名産だ。以前から返礼率が相対的に低いこともあり脚光を浴びにくかったが、寄付を募る仲介サイトを2から5に増やし、地道にアピールする戦略で風向きが変わりつつある。

一方で、全体の金額を押し上げているのは通知に反して過度な返礼を続ける自治体という実情がある。総務省は返礼率が3割を超えたまま寄付を募り8月までに見直す意向もない12自治体を公表した。これら自治体の17年度の受け入れ額は合計で411億円。前年度の2.6倍に増え、全自治体の伸び率(28%)を格段に上回る。
「正直者がバカを見ている」。石川県輪島市の担当者は憤る。17年度の受け入れ額は5千万円減り3億6千万円だった。もともと返礼率は3割以下。熊本地震の被災地に対する寄付の事務代行支援が一巡したためで通知の影響ではないが危機感は強い。「ルールを守らない自治体のせいで過疎地や被災地にとって大切な制度そのものが壊れかねない」と訴える。
ふるさと納税が地域産品の振興などに各自治体の貴重な財源となりつつあるのは確かだ。西日本豪雨災害では被災自治体に寄付による支援が広がった。ただ、寄付の使途に具体的な事業まで選べる自治体は14.3%、活用状況を公表していない自治体は34.4%ある。返礼品だけに頼らず制度を根付かせるにはさらなる工夫が求められる。

全1,788自治体のうち17年度の受け入れ額の上位20位をみると、12自治体が16年度に続きランキング入りした。多くは返礼率が全自治体平均より高く、返礼の魅力度が寄付額を左右する実態が続いた。
4位の佐賀県みやき町は受け入れ額を72億円と16年度より57億円も伸ばした。順位も32位から急上昇した。人気の訳は高額品で地場産品とは見なしがたいとして通知が自粛を求めている家電の返礼だ。「まだダイソンがもらえる」「8Kテレビも登場」。インターネット上では同町の最新の返礼品を巡る情報が飛び交う。町内の家電店から調達しているとみられるが、総務省の担当者も「かなり派手にやっている」と眉をひそめる。
みやき町は大臣通知に沿わないと名指しされた12自治体のひとつ。佐賀県唐津市嬉野市静岡県小山町といった新顔も同様だ。外食チェーンの商品券などを返礼する自治体もある。換金できる商品券も通知では不適切と指摘する。
トップ20の返礼率は平均44%に達し、全自治体(38%)より高い。6自治体では50%を超し、30%未満は1自治体にとどまる。
一方、家電の返礼をやめた長野県伊那市は受け入れ額が72億円から4億5千万円に減った。67億円の減少幅は全自治体で最大。ただ、担当者は「むしろ燃えている」と話す。今後の目標額は6億円。身の丈にあった制度の利用を目指す。
18年度は上位自治体で返礼率を見直す動きもあり、ランキングが変わる可能性もある。

株式投資は上質なギャンブル

知的な生き方や思考の方法論などの著作で知られる英文学者の外山滋比古氏。30歳だった53年から株式投資を続けてきた長期投資家としての側面を持つ。65年にも及ぶ投資経験から得た哲学やノウハウを日経マネーに語っている。

セオリーと呼ばれる投資方法とは異なるが、外山氏は近著『知的な老い方』で、年齢を重ねたら挑戦すべきことの一つとして、個別株への投資を挙げている。
その理由として、「高齢者にとって、株式投資が一番の生きがいになる可能性があることに気付いたから」という。定年退職を迎えてリタイアした人は海外旅行などの余暇を楽しんでいるが、それは一過性のもの。やることがなくなれば退屈して、言い方は悪いが、いずれぼけてしまいかねない。一方、株式投資を始めると、それにはまって、中には「明けても暮れても株」という人も出てくる。一種のギャンブルとして生き生きと株式投資をすれば、常に一喜一憂する。ぼけてなんていられないからだそうだ。

株式投資といっても、若い人にお勧めのNISAで投資信託を購入するなんてのでは駄目らしい。なぜなら安全すぎて面白くないから。自分で勉強して個人の責任で銘柄を選ぶことに意味があり、それで配当と値上がり益を合わせて、平均して毎年7%くらいの利益を上げることができれば、10年で資産は2倍になる。しかも、その気になれば、90歳や100歳になってもできることなので、こんなにいい老化防止の手段はないという。生き生きと取り組むから、病気にもならず、医療費の抑制にもつながるから、ひいては国の社会保障費も大きく減少するだろう、とまで言い切る。
日本国民の金融資産の約1800兆円のうち、1000兆円は預金だという統計数字があるが、その大半を所有しているのは高齢者。その高齢者たちが株式投資を盛んにするようになり、1000兆円の2〜3割にあたる200兆〜300兆円が株式市場に回れば、それはすごいことになる。日本株は米国株をはるかに上回るペースで上がるに違いない。

ただ、株式投資にギャンブル性があるのも事実。昔から『株はいけない』と言っている人はギャンブル性があることを理由にしているが、ギャンブルは人間にとって極めて有用な精神的刺激なのだと言われている。年寄りが生き生きとするには、良いことばかりでは駄目で、それではぼけてしまう。証券会社など他人任せではなく、自分で銘柄を選んで売買する。それですごく儲かることもあれば、大きな損を被ることもある。そうして一喜一憂することが、人間が生き生きと生きていくためには必要なのだそう。損しても、それで生活ができなくなるほどでなければ、『治療費代わり』と思えばいい。多少損をしても、病院に通って薬代を払うよりはずっといいという考え方もある。
「旅行などで100万円や200万円も使うよりは株式投資を続けて一喜一憂を長く楽しんだ方がいい。『楽しかった』と思うことができれば、損を出してもそれで後悔することはないだろうし、株でワイワイ話をして元気になった人もたくさんいる」ようだ。

それに、株式投資は競輪や競馬などに比べれば、はるかに上質なギャンブルだと外山氏は断言する。他のギャンブルは非常に確率が低い上、負けたら何も残らないのに対し、株は会社が潰れない限り、その価値がゼロになることはない。信用取引先物取引に手を出さず、あくまで現物だけを売買すれば、借金を背負って破綻することもない。
持っているお金を3分割して3分の1は生活費に充て、もう3分の1はもしもの時のために取っておく。そして残りの3分の1で株式投資をする。そうすれば仮に株の運用資金がゼロになっても、生活に支障を来すことはない。株では新たな生きがいを得たり、会社を辞めて切れた社会との結び付きを取り戻したりというように、得られるものも多い。
今は金利がほとんどゼロだから、配当のある株を買った方が、預金よりもはるかにいい。それで値上がりすれば恩の字と考えて取り組む。これで損を出すのは、よほど運の悪い人と割り切る。こう考えると、確かに株式投資は最も上質なギャンブルなのかもしれない。

久々に堅調のJ-REIT

先週も株式市場は、トランプ米大統領が仕掛ける貿易摩擦の行方とその実態経済への影響を不安視する動きとなった。こうしたなか、東証REIT(不動産投信)指数が約1年3カ月ぶり高値をつける堅調となった。
J-REITが利回り重視型投資商品であることを加味し、「分配金込み東証REIT指数」と「配当金込みのTOPIX」のパフォーマンスを比較すると、J-REITのトータルリターン(総収益)が株式より優勢となっている。実は、今春以降は米国市場でもREIT指数が株式指数より優勢となっており、REITと株式の「リスク分散効果」があらためて注目されている。

特に、J-REIT堅調の背景としては、

  1. 貿易摩擦の影響を受けにくい「内需型」の特性が評価されている
  2. 国内の物価上昇率鈍化で「日銀の金融緩和政策は長期化する」との見方が強まっている
  3. デフレ脱却を目的とした日銀によるJ-REIT買い入れ(年間約900億円)に加え、地方銀行を中心とする金融機関、年金基金、外国人投資家などの「利回り選好マネー」が需給を改善させている

などが挙げられる。

J-REITの国内債券金利(国債利回り)やその見通しに対する敏感性(特に長期金利に対する逆相関性)に注目してみよう。過去の市場実績を振り返ると

  1. 金利の低位安定が見込まれた局面では分配金利回り面でみたREITの魅力が相対的に高まりやすい
  2. REITの資金調達コストや負債返済額が低減もしくは安定化する可能性が好感されやすかった

といえる。

堅調の理由は、国内の物価上昇率(生鮮食料品の除く消費者物価上昇率)が+0.7%に減速するなか、日銀による大規模金融緩和政策の長期化が見込まれていることも主因と言えそうだ。
J-REITの平均イールドスプレッドスプレッド(東証REIT指数の平均分配金利回り-日本10年国債利回り)は3.82%と、13年以降の同スプレッド平均(3.13%)をいまだ上回っている。
一方、国内景気の堅調と企業業績の拡大が続いてきたことで、REITが投資する商業用不動産の過半を占める首都圏オフィス市況は改善が続いている。三鬼商事が調査している「東京都心ビジネス地区のオフィスビル市況」(5月末)によると、平均空室率は2.68%に低下し、平均募集賃料(1坪当り)は前年同月比+6.5%の2万19円と、09年以来約9年振りに2万円台となった。
こうした分配金原資(投資法人のキャッシフロー)の改善傾向で、東証REIT指数の「12カ月先予想分配金」は69.20円となっており、約3.9%の分配金利回りが見込まれている(Bloomberg集計による市場予想平均)。こうした利回り面の相対的な魅力とリスク分散効果期待は、引き続きREITの堅調を支える要因となりそうだ。

こうしたJ-REITに投資をするには、個別銘柄それぞれに投資する以外に、多くのJ-REIT銘柄に分散投資する公募投信やETF(上場投資信託)を活用する方法もある。ETFには、「Next Fund東証REIT指数連動型上場投信」(1343)、「上場インデックスファンドJ-REIT隔月分配型」(1345)などがある一方、投資家ご自身が比較的少ないREIT銘柄を選んで「ポートフォリオ」(分散投資運用)を構築することも可能だ。その際は、REITの「業種」(セクター・用途)や地域(エリア)の分散を意識されることをお勧めしたい。
たとえば、東証REIT指数内の時価総額ウエイトで上位に位置する銘柄のなかから、オフィス特化型REITの大手2銘柄、ショッピングセンター特化型REIT1銘柄、物流倉庫特化型REIT1銘柄、ホテル特化型REIT1銘柄に、地域(エリア)特化型として九州圏の複合型REIT1銘柄と関西の複合型REIT1銘柄を加えてみると、不動産の業種を分散しつつ、日本独特の「震災リスク」を意識して地域分散も可能となる。その7銘柄の年初来平均騰落率(算術平均)は+5.1%、分配金利回り平均は3.9%と、東証REIT指数と比較して遜色がなくなる。

つみたてNISA投資家の半数が満足という結果

1月にスタートした積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」を個人投資家の4人に1人が利用し、その半数が同制度に満足していることが、雑誌「日経マネー」の調査で見えてきた。投資歴1年未満の層では、利用率が4割近くに達する。低コスト・低リスクで20年の長期にわたって非課税で運用ができる同制度が、投資未経験者を呼び込んでいる様子がうかがえる。

日経マネーが毎年実施する「個人投資家調査」は今年で12回目。4月13-30日にインターネット上で実施し、1万3137人から回答を得た結果によると、つみたてNISAを利用していたのは3172人。若い世代の利用者が多く、20代、30代の利用率はそれぞれ約3割に達した。投資歴が浅い層ほど利用率が高い傾向で、投資歴1年未満の利用率は37.6%、1-3年未満は24.9%にのぼる。
17年に制度が拡充された個人型確定拠出年金(iDeCo)は23.7%が利用。年代では40代の利用率が最も高く(31.7%)、30代(29.8%)が続いた。投資経験でみると、投資歴1-3年未満の利用率が28%と最も高く、次いで1年未満(25%)だった。
両制度とも、利用者の半数超が制度に「満足」「非常に満足」と回答。税制優遇を受けながら資産形成ができる両制度を評価している投資家が多数派だ。

コンピューターのアルゴリズムに基づき資産運用を行う「ロボアドバイザー」は12.1%が利用。利用者の6割以上を30~40代が占めた。
ロボアドバイザーを使った資産運用は比較的低コストなうえ、ポートフォリオの構築や定期的なリバランス(再配分)の手間を省ける。仕事と子育ての両立で忙しい世代の効率的な資産形成ツールとして普及しつつある。
ただ、利用した感想については、「非常に満足」「満足」が34.2%に対し、「不満」「やや不満」が36%と拮抗している。

17年に一大ブームとなった仮想通貨に投資していたのは、20-30代の投資初心者層が中心だ。調査を実施した18年4月時点で仮想通貨に投資していたのは17.2%。そのうち運用成績が分かる人のデータをまとめたところ、ピーク時には投資元本の2-5倍程度まで資産が膨らんだ人が多かったものの、調査時点では6割が含み損を抱えていた。
仮想通貨に投資している人の属性を見ると、その半数以上が30代以下で、投資歴は1年未満(26.5%)が最も多い。金融資産は500万円未満が52.3%(回答者全体では41.1%)と過半を占めた。「今後も仮想通貨投資を続けるか」との質問には、回答者の5割近くが「今後は投資しない」とした。

調査では、リスク資産(株、投資信託、外貨、不動産など)への投資状況や運用成績も聞いた。17年の1年間で運用成績がプラス(1%以上)だった人は55.5%。そのうち4割が投資歴10年以上のベテラン投資家だった。
15-17年の3年間にわたり年間5%以上のリターンを上げた人が保有するリスク資産をみると、日本株(95.3%)が最も多く、次いで先進国株投信(22.3%)、外貨預金(17%)、国内不動産投資信託(REIT、16.8%)の順。一方、3年間にわたり運用成績がマイナス(-1%以下)の人が保有する資産で多かったのは、日本株(81.5%)のほかは外貨預金(10.9%)、外国為替証拠金(10.7%)、バランス型投信(9.5%)だった。
好調な株式相場を背景に、日本株でもうけた人も多い。17年に日本株の運用成績がプラスだった人は、55.1%と半数を超えた。日本株で10%以上のリターンを上げた人の投資スタイルをみると「新興・中小型株狙い」「高配当・株主優待狙い」がいずれも23%と最多。銘柄選びで重視することのトップは「成長性」で、17年は堅調に推移した中小型株で有望銘柄を見つけ、大きなリターンを上げた投資家が多かったことが分かる。
一方、2月の相場急落の影響もあり、18年1-3月の日本株運用成績がプラスだった人は全体の4割にとどまった。

今回の回答者には、金融資産1億円を超えた「億超え投資家」が547人(男性508人、女性39人)いた。その詳細を見ると、年代は50-60代が中心で約6割を占める。職業はリタイアして無職という人が最も多く、会社員、経営者・役員が続いた。年収は1000万円以上が約3割。現役世代は潤沢なキャッシュフローを生かして資産を増やしている人が多いことが分かる。
直近5年のリスク資産運用の成績を見ると、5年連続でプラスの人が64%にのぼった。株式投資スタイルでは、(1)高配当・優待株投資(20.1%)(2)大型優良株投資(17.4%)(3)割安株投資(15.7%)の順で、中長期の構えで投資に臨んでいる人が多い。
興味深いのが、4人に1人が積み立て投資をしていたこと。回答者全体平均(37.5%)より割合は低いが、1億円を超える資産を築いてもなお、リスクを抑えて着実に資産を増やすことを心掛けている人が一定数いることが分かる。
億超え投資家の具体的な投資術や調査結果の詳細は、6月21日発売の「日経マネー」8月号に掲載される。

先進各国の住宅市場に異変の兆し

先進国を中心に金利の低い環境が長く続き、ここ数年世界中の多くの都市で住宅価格が大幅に値上がりしてきた。全体としてはまだ不動産市場は堅調と言えるが、一部のハイエンドな地域では変調の兆しがある。これは大きな変動につながるシグナルなのだろうか?

ロンドンでは住宅価格の下落が続いている。英国住宅金融大手のハリファックスによると、18年1-3月期には前年同期比で3.8%下落し、10年初め以来の大きな下げ幅となった。17年10‐12月期も0.7%の低下となっており、前年比での下げは3期連続だ。同社の月次の数字はぶれやすいとされるが、4月も下げ基調が続いたようだ。
その他の調査でも、同様の傾向が示されている。不動産会社ライトムーブ社の調査では、5月にはロンドンの住宅価格が前年比で0.2%下落した。またアカデータ社の発表でも、4月にはロンドン地区だけが英国内で住宅価格が下落し、その下げ幅は2.5%だったという。同社によると、英国全体では、16年に一時見られた+9%よりは緩やかになったものの、1%の価格上昇だった。
ロンドンで住宅価格が低下している最大の理由は、BREXITに備えたビジネス界の動きだ。特に、金融センターだったシティに欧州の主要拠点を置いていた多くの銀行が、EU域内の他国へと移転する計画を進めている。銀行はEUのいずれかの加盟国で免許を取得すればEU全域での営業が可能だが、英国がEUを離脱すれば、同国での免許は域内で使えない可能性があるためだ。シティで金融業界に勤める人は一般的に年収が高いため、そうした人らの国外流出は特にロンドンの高級物件に影響を与えていると見られる。

ダグラス・エリマン社とミラー・サミュエル社によると、2018年第1四半期のマンハッタンでの住宅取引額は前年同期比で25%も減少したという。これは09年第2四半期以来の減少幅だ。また売買価格も同時に低下しており、中間価格は108万ドルで前年比‐2%となり、さらに平均価格では193万ドルで同‐8.1%となった。
買い手優位の流れは4月以降も続いているようで、別の不動産会社のレポートによれば、高級マンションの売り手は当初の提示価格よりも平均で5-16%値下げして契約しているようだ。
マンハッタンでの価格下落の要因の一つとして、昨年末に決まった大型減税の一環で、住宅ローン利子控除におけるローン総額の上限が引き下げられたことがあるとされる。また、利上げによって、住宅ローン金利が上昇していることも影響しているとみられる。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発表する30年物住宅ローン固定金利は、5月23日時点で4.66%となり、11年5月以来の高い水準となった。とはいえ、国全体で見れば住宅価格はまだ上昇しているのは英国と同様だ。
米連邦住宅局(FHA)によると、1‐3月期には50州全てと首都ワシントンで住宅価格が前年同期比で上昇した。さらに、不動産情報サイト、ジローによると、4月も上昇は続き、中間価格は前年同期比8.7%増の21万5600ドルだったという。これは06年6月以来の大きな伸び率だ。

オーストラリアでは住宅価格の下落基調が続いており、米不動産調査大手コアロジック社が発表した4月の豪住宅価格指数は、前月比で0.1%低下した。低下は17年10月以来7か月連続だ。しかしここでも下げをけん引しているのは都市部で、地方だけを見るとまだ上昇傾向が続いている。都市部の下げは特にシドニーメルボルンなどで顕著に見られ、4月は共に前月比0.4%の低下となった。
シドニーなどでの価格下落の背景には、政府による規制の強化がある。中国などからの海外資金や投機資金の流入により、シドニーの住宅価格は5年前に比べて7割ほども上昇したとされる。一般の家計には手の届かない水準となり、ついに政府は昨年、銀行に対してローン審査の厳格化を要請した。
その他、空き室のままになっている住宅の外国人オーナーに課税したり、外国人へのキャピタルゲイン課税を強化したりするなどの対策を進めた結果、外国人の買いが急激に減少したとされる。

英国、米国、オーストラリアなどの都市部で高級物件の価格が下がっている背景は、それぞれ異なる。ただ共通点もあって、それは金利が上昇傾向にあるということだ。英米はすでに利上げを進めており、16年8月以来金利を据え置いているオーストラリアでも、次の利上げを視野にすでに銀行間の調達金利は上昇を始めている。
こうした動きに関連して、国際通貨基金(IMF)が4月に非常に興味深い分析を発表している。主要40か国と主要44都市を通じ、住宅価格がシンクロして動く傾向が強まっているというのだ。
その背景として、世界的な低金利の中、グローバルに動く投資家の資金が世界各地の不動産市場にも流入していることを指摘している。特に利回りや安全性が魅力的な都市部において、そうした傾向が強いという。
IMFの分析が正しいとすれば、今後「世界的な低金利」という環境が変わっていけば、これまで多くの国で住宅価格が上昇してきたのとは逆に、世界的にシンクロして価格は下落するリスクがあるということだ。香港や東京などではまだ価格下落は見られていないようだが、注意しておくべきなのかもしれない。

ECBも量的緩和の終了へ

欧州中央銀行(ECB)は6月14日の理事会で、量的緩和を今年10月以降は月間150億ユーロに縮小し、年内に終了する方針を決定した。金融危機を受け導入した措置の解除に向け大きな一歩を踏み出したことになる。
声明では「9月末までは月間300億ユーロの現在の買い入れを続け、それ以降はデータが理事会の中期インフレ見通しを確認するものとなれば、買い入れ規模を12月末まで月間150億ユーロに縮小した後、終了すると想定している」とした。

金利については「少なくとも19年夏にかけて、さらにインフレ動向が持続的な調整の道筋を巡るわれわれの現在の予想に沿い続けることを確実にするために必要な限り、現在の水準にとどまる」との見通しを示し、買い入れ策を終了させても早急に急激な政策引き締めには動かない方針であることを示した。19年10月に任期が切れるドラギ総裁が8年間の在任中に一度も利上げを行わないまま退任する可能性も出てきた。

ECBは主要政策金利を予想通り据え置いた。リファイナンス金利は0.00%に、限界貸出金利は0.25%に、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。
市場ではECBは19年6月までに中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き上げるとの見通しが織り込まれていたが、今回の理事会を受け、ECBが初めての利上げに着手する時期の予想は19年9月に3カ月間後ずれした。
ECBの新たなガイダンスを受け、外為市場ではユーロドルが1ユーロ=1.1644ドルと約1%下落。1日の下落としては17年10月以来の大きさとなる。
ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、今回の理事会では「利上げの時期について討議しなかった」とし、「堅調な経済と先行き不透明性の増大が並存する中で今回の決定を行った」と述べるにとどめ、利上げの時期を巡る詳細については明らかにしなかった。

ECBは声明で、金利は少なくとも19年「夏にかけて」現行水準にとどまると表明。ドラギ総裁は「夏にかけて」との文言について、「もし9月という意味であれば、実際にそう書いていただろう。われわれが言いたいのは、経済が好調を呈すると同時に不透明性が増す中で今回の決定を下しており、『夏にかけて』というのは意図的に時期を特定しないということだ」と説明。
先行き不透明性とリスクは増大しているとし、「この日の決定のすべての側面において選択肢を維持したい」とし、このため金利は少なくとも19年夏まで現行水準にとどまるとの見方を示した。

見通しに対するリスクを反映し、ECBは最新のスタッフ予想で、今年と来年のユーロ圏のインフレ率の見通しを引き上げた一方で、今年の成長率見通しを下方修正。今年と来年のインフレ率はともに1.7%になるとし、従来の1.4%から引き上げた。経済成長率については、今年は2.1%になるとし、従来の2.4%から下方修正した。
ユーロ圏では原油高や為替相場の動向を受け輸入価格が上昇し、これが徐々に消費者物価に反映され始めている。一方、保護主義を巡る懸念などが経済成長に対する重しとなっており、ECBの成長率見通し引き下げにつながったものとみられている。
政策の完全な正常化には何年もかかると予想されるものの、世界の主要中銀は緩和策を引き揚げていくとの見方が市場では織り込まれており、前日には米連邦準備理事会(FRB)が利上げを決定すると同時に、声明から景気刺激に向け金利を十分に低い水準にとどめると確約する文言を削除している。
FRBは2013年12月にテーパリング(量的金融緩和の段階的な縮小)を開始したが、量的緩和終了の具体的な期日のほか、その後の措置などについては明示しなかった。ECBは今回、買い入れ策終了の具体的な期日を示したことで、FRBより踏み込んだ措置を取ったと言える。
しかし、貿易戦争の懸念や、イタリア新政権の行方や輸出需要の軟化などを背景にユーロ圏経済の先行き不透明感が出ていることで、ECBは難しい舵取りを迫られる可能性がある。
ただし、イタリア銀行(中央銀行)総裁を務めたドラギ氏は、イタリアで見られている問題は地域的なもので、政権交代は通常のマーケットイベントに過ぎないと指摘。ユーロ圏債務危機時に見られたような広範な市場のパニックとの違いを強調し、イタリアの問題が他に波及することはないとの認識を示した。

この日のECBの決定について、マーケッツ・ドットコムの首席市場アナリスト、ニール・ウィルソン氏は今回の決定について、「量的緩和(QE)についてはややタカ派的、金利についてはむしろハト派的という絶妙なバランスを取った。ドラギ総裁は市場の見方の均衡を保ち、いわゆるテーパータントラムを回避しようとしている」と指摘。JPモルガンエコノミスト、グレッグ・フゼシ氏は「金利を巡る決定はハト派的だったが、量的緩和については双方向への柔軟性を残したと言える」と述べた。
このほか、BNPパリバエコノミスト、ルイジ・スペランサ氏は「昨日のFRBは非常にタカ派的だったが、きょうのECBは非常にハト派的資産買い入れ策の終了を発表することを選択した」と指摘。ノルデアのエコノミスト、ヤン・フォン・ゲリッチ氏は「買い入れ策の終了は非常に緩和的な金融政策の終了を意味するわけではない。ドラギ総裁の記者会見はハト派的で、われわれはECBは19年12月まで利上げに踏み切らないと予想している」と述べた。